2006年5月に中国洛陽の隋唐故城の東郊で発見された大変貴重な景教石刻『大秦景教宣元至夲経』の続きです。製作年代は末尾に大和3(829)年2月16日と刻されており、唐代の作です。下部が破損し文字は欠けています。全文が漢文で書かれ、48年前に中国西安の教会堂に建てられた大秦景教流行中国碑に用語や文字が似ており、十字のデザインも、発掘された景教関連のものと似ています。
(訳者・宮川和彦/ホームチャペル・キリストの花嫁牧師)
(第三面)
9. それゆえに物事はご意志によって進められていくと信じられた。何も期待なしに物事は変わっていくだろう。非実在が存在していくだろう。そして、実在が破壊され、非実在になるだろう。これらすべてが創造された。原因なくしては何もない。彼が不思議な創造主と呼ばれるのは驚くべきことではない! 空虚なしの王。被造物は隠され、あるいは現わされ、創造主を感じ、心から応答する。御霊によって生まれた子どもたちは、何と違っていることか。
10. 彼らは創造主を敬虔に礼拝する。彼らは創造主に魅了させられる。アラーハを知らない者たちの功績は、何も魅力を放たない。彼らの施しは憐みから出てこない。アラーハは寛大なお方であり、かつ最も子細なことまで観察できる。彼は、すべての者をいつまでも養われる。彼は、すべての堕落した者たちをご覧になり、それを一つの汚れた欲望と見なされる。それが仮に一つの汚れた欲望であったにせよ、それを真の汚れた欲望とは見なさない。それをご覧になるが、覚えられない。
11. 見られるものを理解することが見ることである。限りなく聞くことは聞くことではない。聞かれるものを理解することが聞くことである。限りない力は力ではない。忍耐し続けることが力である。限りなきものは空虚、無形、そして無法になりがちである。創造主が見るものは無限で限りないものである。彼はまったく自由である。彼は寛大に無限を支配し、落ち着かせる。彼の不思議な体系は円の中に現わされる。
12. 事物の根元的機能はすべて消し去られた。魂だけがその相違を感じることができる。蓄積された愚かさが破滅へと導く。それゆえ、彼らは善意で教えられ、変わりなく支配され、そして慈愛によって救われるべきである。見よ。悔い改める者たちは、その罪は取り去られる。これは創造主がすべてのものを変えることができるが、彼自身は変わることがないことを意味する。
13. 創造は、最後に変化するだろう。しかし、創造主は盛衰することなく、また清濁もない。彼はご自身を何もない中に保持し、その永遠の実在は変わることがない・・・(文字中断)
14. メシヤは最初、御霊によって天的に祝され誕生したことを、知恵をもって知覚し、そのことを完全に理解する。それは、非実在と実在の両方である。それは空(くう)ではない。空の中の非実在は不振を生じさせない・・・(文字中断)
(第四面)
15. 聖霊の実体は、真理がまことに具現化したことであり、永遠の喜びのいのちである。それは、次のことを示している。すなわち、創造主がどんな境遇にある者たちのために、そして律法なしの道に迷う者たちのために持っている・・・(文字中断)
16. 理解する者は大いに啓発されるだろう。理解する者は真理からすべての益を受けるだろう。無学な人々は沈滞した知識を持っている。彼らが知覚することは真理に反し、それゆえ、御霊は初めであり、自然な・・・(文字中断)
17. そして寛大である。人はやがて最後に死ぬことを知るべきである。従順が主要なことである。それゆえ、御霊を知り、瞑想を通して誘惑に抵抗せよ。変わりゆく知識を求めるな・・・(文字中断)
18. 彼は8つの条件を用意し、死に勝利し、いのちを与える3つの恒久的原理をもたらした。人は常に熟考し、この8つの条件にしたがって深く悔い改めるだろう。十分に注意せよ・・・(文字中断)
19. 法王景通は説話を終了した。全体的に大衆は彼の教えを理解し、納得した。彼は、彼らが知恵を得るために彼らに説明した・・・(文字説明)
20. すべての面。しかし、ある者たちはその教えを受け入れ、書き、朗唱した。彼らは信じ、理解し、熱心にそれを実践に移していった。もちろん、そのような人々の徳は、さらに進んでいくことは自明なことである・・・(文字中断)
(第五面)
21. 海が谷に溢れ流れるように、太陽が昇り、暗闇を消し去るように、神の偉大な平静さは全ての自然界の要素によって証しされている。汝の実在を知り、常に喜べ。洗い流せ・・・(文字中断)
(続く)
※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、2014年、イーグレープ)
『景教遺珍』葛承雍主編(2009年、文物出版社)
■ 温故知神—福音は東方世界へ: (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)
(11)(12)(13)(14)(15)(16)(17)(18)(19)(20)(21)(22)(23)(24)(25)(26)(27)(28)(29)(30)(31)(32)
◇
川口一彦(かわぐち・かずひこ)
1951年、三重県松阪市に生まれる。現在、愛知福音キリスト教会牧師。日本景教研究会代表、国際景教研究会(本部、韓国水原)日本代表。基督教教育学博士。愛知書写書道教育学院院長(21歳で師範取得、同年・中日書道展特選)として書も教えている。書道団体の東海聖句書道会会員、同・以文会監事。各地で景教セミナーや漢字で聖書を解き明かすセミナーを開催。
著書に「景教-東回りの古代キリスト教・景教とその波及-」改訂新装版(2014年)、「仏教からクリスチャンへ」「一から始める筆ペン練習帳」(共にイーグレープ発行)、「漢字と聖書と福音」「景教のたどった道」(韓国語版)ほかがある。最近は聖句書展や拓本展も開催。
【外部リンク】HP::景教(東周りのキリスト教)