保守的聖書観に立つ終末論的視点からは、その超国家的な在り方や、保守的な価値観を破壊する側面を否定できない国連は手放しに喜べないが、そんな国連が、神の愛、憐(あわ)れみ、そして正義を証しするまたとない宣教の場なのである。そのように国連を捉えているのが、メノナイト中央委員会(MCC)の国連代表を務めるクリス・ライス氏だ。(第1回から読む)
ライス氏によれば、MCCのようなキリスト教団体は、国連において独自の役割を担っているという。「あるキリスト教徒の外交官が私に言いました。『情報は国連の通貨だ』とね。まさにその通りです。キリスト教団体が地域社会と築いている信頼とつながりは、しばしばエリート外交官さえ凌ぐ信頼を国連にもたらしています」
「政治権力に関わることは、それを支配することを意味しません。むしろ、キリスト者は、国連の政治的な複雑さを乗り越えながら、神の国の価値観、つまり愛と憐れみ、正義、そして真理を証しするように召されています。そこは、私たちが耳を傾け、関係を築き、愛をもって真理を語ることを学ばなければならない場なのです」とライス氏は言う。
「国連の外交官がキリスト教団体の話を聞く義務はどこにもありません。しかし、このことは、私たちにある示唆を与えます。つまり静かな影響力と敬意ある態度と対話は、いかにして彼らへの説得力を持つのか、その方法を教えてくれるのです。ある米国人の外交官との昼食の席で、ガザと北朝鮮に影響を与える米国の政策について、私は彼に懸念を表明しました。その外交官は注意深く耳を傾け、互いの敬意ある会話を通して、私たちは信頼を築き始めました。それは将来に関わる重要な基盤となるのです」
「国連は決して完璧ではありません。行動が遅く、官僚主義に悩まされることもあります。しかし、ウクライナとロシア、イスラエルとパレスチナ、米国とイランのような国の代表者が同じテーブルにつき、共通の基盤を見つけようとすることができる数少ない場所の一つです。人々が意見の合わない人をますます避ける世界において、国連は私たちに多様な視点と関わり、平和構築に必要な忍耐を学ぶことを強いるのです」とライス氏は語る。
「毎日、国連の外に掲げられた193本の旗の側を通り過ぎ、私が働くチャーチセンターに向かうとき、世界がここに集まっていることを思い出します。国連における私たちキリスト者の存在は、世界の対話に影響を与え、神の国の価値観を権力の座にまで伝え、神の正義と憐れみの証人となることを可能にします。イエスが弟子たちに『地の果てまで』(使徒言行録1章8節)行くようにと命じられたように、今日、その地の果ての人々が国連に集まっています。私たちが国連にいることによって、私たちはあらゆる国の人々の人生に触れる機会を得ています。そして、それは決して無視することのできない宣教地なのです」
国連のような場所にキリスト者が置かれており、そのところでキリストの香りを放っているのだ。なんという励ましだろう。国連職員の救いとともに、国連とキリスト教団体の協力関係が良い実を結ぶように祈っていただきたい。
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