ところざきりょうこ
1978年生まれ。千葉県在住。2013年、日本ホーリネス教団の教会において信仰を持つ。2018年4月1日イースターに、東埼玉バプテスト教会において、木田浩靖牧師のもとでバプテスマを受ける。結婚を機に、千葉県に移住し、日本バプテスト連盟花野井バプテスト教会に通っている。※旧姓さとうから、結婚後の姓ところざきに変更いたしました。
1978年生まれ。千葉県在住。2013年、日本ホーリネス教団の教会において信仰を持つ。2018年4月1日イースターに、東埼玉バプテスト教会において、木田浩靖牧師のもとでバプテスマを受ける。結婚を機に、千葉県に移住し、日本バプテスト連盟花野井バプテスト教会に通っている。※旧姓さとうから、結婚後の姓ところざきに変更いたしました。
山間にある小さな集落に、その古民家はありました。昔ながらのしっかりとした造りでしたが、それでも冬の近づいたこんな夜は、地面の底から寒さが伝わってくるのです。ケンジは妻にガウンを着せ、自分も襟元を引き締めて身震いしました。
サキは14歳の中学生。平均よりもちょっと太っちょで、猫と絵が好きでした。サキは今夜も四畳半の四角い部屋でお気に入りのデスクに座り、画用紙にいろいろな色のペンで絵を描いておりました。
田舎町の薄暗い路地裏に、赤と黄色の電飾が輝いておりました。ネオン管は「今宵も貴方をお待ちしております」と行書体で輝いております。小さなレンガ造りのこのスナックは、もう50歳を過ぎたヨウコが一人で切り盛りしておりました。
簡単な夕食を済ませた後で、ハナはダイニングのテーブルに腰掛けたまま、花瓶に生けられた西洋キキョウを見つめていました。鮮やかな緑の葉の中で、白地に薄紫色の縁取りの花たちは、なんとも清楚で何も望まず、ただそっと咲いておりました。
ダニエルは、空の霧の中に身を横たえて、大雨の跳ねる町の路上を見つめていました。路上には暗闇よりももっと深い、闇があふれておりました。その闇は悪魔の懐のようであり、その闇の中に、傘もささずにフードをかぶって震えている青年が立っておりました。
スポーツジムのヨガスタジオは一面が鏡張りで、昔の倍はあるのではないかというほどに肥え太ったミキの体をあからさまに映し出しておりました。ミキはスパッツに大きめのTシャツ姿で、一生懸命ヨガのポーズを取っていました。
リリリリリ・・・。今眠ったばかりだと思ったのに、もう目覚ましが鳴りました。昨日の勤務は遅番で、夜遅くまで働きました。腰が痛み、なかなか寝付けなかったというのに、今日は朝7時からの勤務です。腰をかばいながら、アキラはベッドから這い出しました。
ブブブブブ・・・鈍く携帯電話の目覚ましが鳴りました。ここは大都会のそびえたつビルの中にある、ネットカフェの一室でした。黒い壁で仕切られた、一畳半にも満たないアキラの部屋です。
たくさんお金がありました。幼いころから、ゆとりのある暮らしからは縁がなかったタエにとって、それはとってもうれしいことでありました。今日はデパートで高級な生地をいくつも見比べ、蔦の刺繍の生地でカーテンを注文してきました。
「お前は向こうに行っていなさい」。そう言ってリビングから追い出されたのは、小学校5年生に上がったばかりのコータでした。コータはリビングのドアの前にしゃがみ込んで、両親がののしり合う声、父親が母親をぶつ耐えがたい音をじっと聞き続けておりました。
ユミは隣に寝ている夫を起こさないように、そっとベッドから抜け出しました。音を立てずに寝室を出てキッチンに入ると、換気扇の下に置いてあるタバコに火をつけ、深く息を吐きました。
タイジは底知れぬ闇の中に浮かんでいることに気が付きました。不思議です。闇の中だというのに、何も怖くありません。タイジは目を閉じていましたが、自分が闇の中にうずくまっていることに気付いていました。
先ほどから長いこと、泣き声が聞こえていました。それは冷たい壁の向こうの、隣の部屋からのようでした。リエは壁に頭をもたれて、歌を歌いました。隣の部屋の泣き声の主に聞かせてあげる子守歌のように。
誰からも見向きもされないやつ。そんなふうに周りの人はシュンのことを思っていたことでしょう。シュンは素朴な風貌で、口数も少なく、人との交流も決して得意とはいえません。
青空にゆっくりと夕日が沈み、虹色の光が地平線に広がりました。羊雲が光を映してピンク色に輝きながら、ゆっくり空を流れてゆきます。あまりに美しいこの空をいったいどのような方がおつくりになったのでしょうか。
「さようなら。またお会いできる日を楽しみにしています」。そう言ってマリヤは戸を閉めました。心は期待で満ちあふれておりました。「誰かの役に立てるのかもしれない」。そんな期待です。
マリヤは庭で採れたローズマリーを瓶に詰めて、新鮮な水を注いでおりました。心はまるで、蛇口から沸き出る新鮮な地下水のように、さわやかでありました。そして、ふと「自分は誰も憎んでいない」ことに気付きました。
その街のうわさを、サダ姉は以前から聞いていました。「その街は、神を信じる、現実逃避の愚か者たちが身を寄せ合って暮らしていて、一様に貧しく苦しんでいるのに一向に神の助けも来ないバカげた街」と。それが「猫楽街」のはずでした。
マリヤはうっすらとまぶたを開けました。すると、暗がりに包まれた部屋が、白い粒子がちりばめられたかのように光り輝いていたのです。見慣れたはずの小さな部屋は、まるで神様の幕屋の中であるように神聖な空気に満ちあふれていたのです。
「いいかい、聞きなさい。人は決して見た目なんかではないんだよ。美しさというものはその人の魂からあふれ出るものなんだからね」。今日までサダ姉をよく看てくれたおばあちゃんはそう言って、サダ姉の顔の包帯に手を掛けました。