ところざきりょうこ
1978年生まれ。千葉県在住。2013年、日本ホーリネス教団の教会において信仰を持つ。2018年4月1日イースターに、東埼玉バプテスト教会において、木田浩靖牧師のもとでバプテスマを受ける。結婚を機に、千葉県に移住し、日本バプテスト連盟花野井バプテスト教会に通っている。※旧姓さとうから、結婚後の姓ところざきに変更いたしました。
1978年生まれ。千葉県在住。2013年、日本ホーリネス教団の教会において信仰を持つ。2018年4月1日イースターに、東埼玉バプテスト教会において、木田浩靖牧師のもとでバプテスマを受ける。結婚を機に、千葉県に移住し、日本バプテスト連盟花野井バプテスト教会に通っている。※旧姓さとうから、結婚後の姓ところざきに変更いたしました。
冷たいものに手首をつかまれ、暗い所に引きずり込まれることを感じました。暗い所は底が見えないそれは恐ろしい暗闇で、ケンジのことを、口を開けて待っています。その力にあらがって、叫んだ声で目を覚ましました。
6畳の洋間とベージュ色のユニットバス、小さなキッチン。ささやかな部屋でありました。窓際に寄せた勉強机には、アンティーク調の縁取りの写真立てが大切そうに飾られており、サキの愛した大伯母が満面の笑顔でサキを見守っていてくれました。
田舎町の薄暗い路地裏の、小さなスナックの電飾は置き忘れられたように今日も灯っておらず、ほこりがかぶり始めていました。木目調の扉には張り紙がしてあり、「しばらくお休みさせていただきます」とペン字で書かれておりました。
ハナはベッドにねそべり、ガーゼのケットをかぶってまどろんでおりました。神様に祈りたいのに、からだも心も疲れており、指を組むことさえできませんでした。もともと丈夫なほうではないハナには、日々の家事とささやかな仕事さえつらいものでありました。
悪がケンの体にまとわりついておりました。牧師の言葉を信じて、生まれ変われる希望を何度も持ちました。しかし、それでもケンは、肉に染み付いた罪のままに、人を陥れ、自分を傷つけるような暮らしぶりを繰り返してしまうのです。
ミキは家族の寝静まった深夜に、台所の明かりをたよりに聖書を読んでおりました。1章読み終わると、息をついて「神様、感謝します」とつぶやきました。聖書を胸に抱き、今までの人生を顧みました。
アキラの勤めるケアホーム「ひかりの家」では、誕生日会の準備の真っ最中です。折り紙の輪っかを飾りつけ、ペーパーフラワーをリビングの壁にテープで止めて、安っぽくはありましたがお祝いの雰囲気を作っています。
大都会の真ん中の、夜景のきれいなカフェテリアに、タエは一人でおりました。夜中の2時を過ぎても、街はネオンにあふれて活気に満ちて、人は道を行き交っておりました。
人はどれほどみじめなものだろうか。人はどれほど恥ずべき土くれだろうか。みじめな愛から生まれてきた。みじめな愛を故郷として、父母のもとから生を受けた。同じように生きている。神から顔を背けて。
明けの空の色がみるみると変わってゆく中を、小鳥のさえずりが響き始めました。花壇の葉の先には朝露の結晶がきらめいています。凍てつく夜に耐え忍んだ野良猫たちは、遠い地平の朝日を見て安堵しました。
今よりもっと幼い頃のことを、タイジはよく覚えていました。タイジは里山に囲まれた田舎町に生まれ育ち、自然が好きな夫婦のもとで育てられ、幼い頃から田んぼで泥んこになってザリガニ採り、木登り、野だぬきと追いかけっことやんちゃのし放題で育ちました。
リエはベッドに腰かけ、ライティングデスクを引き寄せて聖書とノートを開きました。開いたのは詩編・・・毎朝4時には目が覚めてしまうリエは、詩編を書き写しながら明かりのつく6時までの時間を過ごしていたのです。
「信仰! 信仰! 人がどう言っているかではなく、神様がどう言っているかだ! 僕は神様の息子なんだ!」そう言ってほほを打っていたのは、もう50歳になろうとしている一人身のシュンでした。
澄み切った冬の風が音を立てながら吹いています。空は群青色、まだ夜が明ける前、すべてが寝静まった神秘の時間。野良猫たちも鳩たちも身を寄せ合って寒い夜を耐え忍び、ふと空の色がみるみると多彩な色彩を帯びながら変わってゆくのに目を留めます。
お祝いムードの東京タワーが灯っているはるか上の雲間から、ダニエルは街を見下ろしておりました。街はクリスマスに浮かれて、ネオンはいつもよりも激しく明滅しておりました。
都会にはクリスマスのイルミネーションがともり始めた頃でした。週末になると赤い帽子をかぶった群れが、駅の角に立ち寒さに身をすくめながらも賛美歌を歌っています。トモコは車の中で毛布にくるまり猫を抱いて、その歌を聞いておりました。
「こんなはずじゃなかった」。マサトはじりじりと唇を噛み、毛布を握りしめて眉間にしわを寄せました。こんなふうにベッドから立ち上がる気力さえも失って、はや3年がたっていました。
「神様どうか、お助けください。私の罪のせいならば、私のことを罰してください」。ミチコは自室で手を組んで、覚えたてのお祈りをしておりました。
女はキッチンでささやかな夕食を作っているところでした。病院から戻ってくると、女が大切に育てていたベランダのハーブも枯れていたため、新しく買った苗をキッチンの窓辺に並べておりました。
世界の地の深みには、そこを埋め尽くすようにうごめいている悪霊たちの雄たけびが、「ほぉう…ほぉう」と響き続けておりました。その響きは、一つでも多くの魂を、悪霊たちの頭である悪魔の‘かまど’にささげることを望んで、今日もやむことがありません。