これは、4歳の時に父を失い、家族もろとも異母兄弟の兄に追い出され、復讐心に燃えていた学なく貧しい少年が、善意の恵みに触れて、いかにして国の霊的指導者といっても過言ではないケニア聖公会の大司教にまでなったかの証しだ。(第1回から読む)
ワールド・ビジョンが提供するチャイルド・スポンサーシップを通して教育の機会を得たジャクソンは、まるで水を得た魚のように、学ぶことの喜びを知り、ますますその賜物を発揮していった。
ジャクソンが21歳になると、今まで憎んでいた異母兄弟に対する恨みはすっかり消えてしまった。その代わりに、優しさと子どもたちの学習を支援したいという願望が彼の復讐心に取って変わったのだ。ジャクソンが子どもの頃に支援を受けたことの影響は、彼自身と他の人々の人生に波及し続けている。彼は、子どもたちが学校に通っていないことに気が付き、マサイ族の学校を設立し、牛の世話をして一日中家を空けている牧童の少年たちのためには、自宅を解放して成人向けの識字クラスを始めたのだ。
彼が数年前にナロク郡で始めた別のプログラムでは、現在約3千人の孤児や弱い立場にある子どもたちを支援している。そして、その子どもたちの中には、大人になってから銀行業やケニア経済の他の分野で活躍する人物さえ現れた。彼らは、自分の家族や他の人々の人生に変化をもたらす人物になったのである。
「彼らは自分が力を与えられたので、今度は他の人々に、自分が力を与えようとしています」「世界全体を変えることはできないかもしれません。しかし、一人の子どもの世界を変えることはできます。そしてその子どもが他の子どもと一緒になって、他の多くの人々の人生を変えることができるのです」。そうジャクソンは語った。
ジャクソンの行動力と仕事ぶりは、彼の所属していた教会の牧師に感銘を与え、牧師は彼に正式な神学教育を受けるようにと勧めた。それでジャクソンは、1991年にベレア神学大学を卒業して学位を取得した。その後、セントポール大学では神学の学士号を取得し、2003年には英国のレディング大学に留学し、社会開発と持続可能な生活の修士号を取得した。1992年に司祭に叙階され、2005年にケリコ教区の司教に任命されたのだ。(続く)
■ ケニアの宗教人口
プロテスタント 56・8%
カトリック 21・5%
英国教会 8・9%
正教 0・8%
土着宗教 7・2%
イスラム 8・3%
ヒンズー 0・4%
◇