2018年の9月28日、インドネシア・スラウェシ島中部を震源とするマグニチュード7・5の地震が発生した。この地震で津波が発生し、震源に近いドンガラ県や湾の奥に位置するパル市などで、最大6メートルの津波が観測された。
ところがこの地震のとき、敬虔なキリスト者の航空機パイロットが、聖霊の導きによって離陸を急ぐよう促されたのだ。その結果、彼が操縦するバティックエアに搭乗していた140人の乗客らは、悲惨な地震の被害から守られたのである。
機長のイコゼ・マフエラは、地震発生後の次の日曜日、ジャカルタの教会でこの経験について証しした。信心深い信者であるマフエラは9月28日、ウジュン・パンからパルへの便での乗務中、いつになく不安を感じ、コックピットで賛美を歌い始めたという。「普段はハミングするだけですが、その日はできる限り主を賛美したかったので、声に出して歌っていました。するとイスラム教徒の副操縦士が『機長、これならあなたは、きっと立派な賛美歌のCDが出せますね』と冗談を交えながら言ったほどです」と彼は振り返る。
マフエラは、パル空港に着陸しようとした際、風が異常に強く「心の中で声が聞こえた」と語った。その声に従い、彼はもう一度旋回してから着陸することを決断したのだ。マフエラは、着陸に際して、特に慎重になるようにと自分に言い聞かせ、詩篇23篇を唱えた。
着陸した後、マフエラは聖霊に促され、地上での滞在を可能な限り短縮して急ぐ必要があると感じた。彼は乗務員に対して、短時間の休憩を取ったらすぐに出発準備をするよう指示した。「私は操縦室から一歩も出ず、管制塔に予定より3分早く出発する許可を求めました」
管制官のアントニウス・アグンから許可を得ると、機長と乗務員は出発準備を整えた。彼は非常に急ぐ必要性を感じ、通常の飛行手順を破り、副操縦士の役割の一部を引き受けて出発時間を短縮した。出発の時が来ると、マフエラの飛行機は滑走路を猛スピードで駆け抜けたのだ。「なぜか分かりませんが、私の手はスロットルレバーを押し続け、まるで1秒でも早く離陸しなければならないかのように、飛行機を加速させたのです」
飛行機が滑走路を加速して離陸するまさにその時、大地震がパルを襲ったのだ。機長と副操縦士は、飛行機が左右に揺れるのを感じた。「滑走路のアスファルトが風で揺れるカーテンのように上下に動いていたのが見えました。もし3分遅れていたら、140人の乗客を救うことはできなかったでしょう」と、マフエラは神妙に語った。(続く)
■ インドネシアの宗教人口
イスラム 80・3%
プロテスタント 10・8%
カトリック 3・1%
儒教 0・9%
仏教 0・4%
ヒンズー教 1・3%
◇