英国国教会、また世界各国の聖公会で構成されるアングリカン・コミュニオン(全世界聖公会)の首席聖職者であるカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーが6日、正式に辞任した。ウェルビー大主教は昨年11月、教会関係者による児童虐待を巡る対応の責任を取るとして、辞意を表明していた。
カンタベリー大主教の公式サイトに掲載された発表(英語)によると、ウェルビー大主教はこの日、公邸であるランベス宮殿の礼拝堂の祭壇に牧杖(主教の司牧のしるしである杖)を置き、カンタベリー大主教としての職務を終える象徴的な行為を行った。
この日はランベス宮殿で一日を過ごし、朝の祈り、昼の聖餐式、夕の祈りに加え、一日を穏やかに終わらせる瞑想的な祈りの儀式である就寝前の祈りを行うなどした。また、ランベス宮殿のスタッフや友人、元同僚らとも面会し、互いに感謝の意を示したという。
英国国教会では、弁護士のジョン・スマイス氏(2018年死去)がキリスト教のサマーキャンプなどで50年近くにわたり、計約130人の少年や青年らに児童虐待を働いていたとする独立調査の報告書が昨年11月に発表された。報告書は、2013年に第105代カンタベリー大主教として就任したウェルビー大主教が、スマイス氏の事件について報告を受けながら、警察に通報するなど適切な対応を取らなかったとして、責任を問うものだった。
ウェルビー大主教は辞意を表明した後はほとんど公の場には姿を現さず、カンタベリー大聖堂でのクリスマスの説教も行わなかった。また、例年は英公共放送BBCで放送される元旦のメッセージも出さなかった。
英デイリー・テレグラフ紙(英語)によると、カンタベリー大主教としての職務は7日以降、大半が英国国教会の次席聖職者であるヨーク大主教スティーブン・コットレルに、一部が第3位の職位にあるロンドン主教サラ・マラリーに委任される。また、カンタベリー教区の行事は、同教区の補佐主教の立場にあるドーバー主教ローズ・ハドソンウィルキンが執り行うことになる。
一方、コットレル大主教に関しては、スマイス氏の事件の対応を巡り、ウェルビー大主教と同じく辞任するよう求める声が一部である。
ウェルビー大主教が担ってきた職務の移行には数カ月かかると見込まれており、次期カンタベリー大主教の発表は、今年の秋ごろになる可能性があるという。
米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」(英語)によると、ウェルビー大主教の後任候補には、マーティン・スノー主教(レスター教区)、ポール・ウィリアムズ主教(サウスウェル・ノッティンガム教区)、グリ・フランシスデカニ(チェルムスフォード教区)、サラ・マラリー主教(ロンドン教区)、グラハム・アッシャー主教(ノリッジ教区)らの名前が挙がっている。このうち、フランシスデカニ主教とマラリー主教は女性で、フランシスデカニ主教はイラン生まれの元難民として知られる。