イスラエルと、パレスチナ自治区ガザ地区を実行支配するイスラム組織「ハマス」の停戦合意が19日に発効し、ハマスが拘束していた人質のイスラエル人女性3人が解放された。また、イスラエルは20日未明、パレスチナ人受刑者90人を釈放したと発表した。
停戦合意は、交渉を仲介したカタールと米国が15日に発表。英公共放送BBC(日本語版)によると、3段階で構成され、第1段階は6週間の期間に、ハマスが人質33人を解放するのと引き換えに、イスラエルがパレスチナ人受刑者数百人を釈放する。また、ガザ地区の全ての人口密集地域からイスラエル軍が撤退し、支援物資を運ぶ大量のトラックがガザ地区に入ることが認められる。
停戦開始16日目に第2段階に向けた交渉が始まり、残りの人質の解放、イスラエル軍の完全撤退、持続可能な平穏の回復を実現する。そして第3段階で、ガザ地区の復興と残された人質の遺体の返還を実現するという。
ハマスは停戦合意前の時点で、依然として94人を人質として拘束しており、うち34人が既に死亡したとみられている。また、一連の戦闘が始まった2023年10月以前から4人が人質として拘束されており、うち2人は既に死亡したとされている。
一連の戦闘は、ハマスが23年10月、イスラエル南部に越境攻撃を加え、多くの外国人を含む1200人近くを殺害し、251人を人質に取ったことを発端に始まった。イスラエルは報復として、ハマス壊滅を掲げてガザ地区に侵攻。ガザ地区はこの戦闘で荒廃し、住民の大半が家を追われ、これまでに4万6千人以上が死亡したとされる。
15カ月に及ぶ戦闘の停止に向けた動きが始まったことを受け、キリスト教の指導者らも相次いで声明を発表するなどした。
ワールド・ビジョン / アンドリュー・モーリー総裁
中東を含め世界各国で子ども支援を行っている福音派のキリスト教国際NGO「ワールド・ビジョン」は、停戦合意が発表された翌日の16日、歓迎する声明を発表。アンドリュー・モーリー総裁兼最高責任者(CEO)は、「停戦は暴力のない未来への希望の光」だとし、ガザ地区の子どもたちがこの間、想像を絶する苦難とトラウマに苦しんできたことを強調した。
また、ハマスによって拘束されていた人質の解放も歓迎。紛争において全ての子どもは標的にされるべきではなく、人道支援を受ける権利が常に尊重されるべきだと訴えた。一方、戦闘の停止は前向きな一歩だが、ガザ地区を含め周辺地域の状況は依然として脆弱(ぜいじゃく)だと指摘。ヨルダン川西岸地区やレバノン、シリアの状況にも触れ、人道支援の必要性はこれまでと同様に切実だと訴えた。
世界教会協議会 / ジェリー・ピレイ総幹事
世界教会協議会(WCC)のジェリー・ピレイ総幹事も16日、停戦合意を歓迎する声明(英語)を発表。「間もなく解放される人々の家族に安堵(あんど)がもたらされ、多くの人々と地域社会に多大な死と破壊をもたらしたガザ地区での壊滅的な戦争の終結への希望が再び燃え上がることを喜ばしく思います」と述べた。
また、停戦合意の実現のために尽力した全ての当事者と関係者に感謝を表明。「この停戦が、この残忍で壊滅的な戦争の一時的な休止にとどまらず、正義、犯した罪の責任追及、パレスチナ人とイスラエル人の平等な権利と尊厳の承認に基づく持続可能な平和への扉を開くことを祈り、願う」と述べた。その上で、ガザ地区への人道支援と再建のための詳細なロードマップの策定を求めた。
カトリック教会 / ローマ教皇フランシスコ
カトリック教会のローマ教皇フランシスコは、停戦合意の発効日である19日、日曜日正午のお告げの祈り(アンジェラスの祈り)の中で言及した。バチカン(ローマ教皇庁)公営のバチカン・ニュース(英語版)によると、教皇は「合意されたことが当事者によって直ちに尊重され」、全ての人質が最終的に家に戻り、愛する人たちと再び抱き合えるようになることへの希望を示し、「私は彼らとその家族のためにたくさん祈る」と述べた。
また、「緊急に必要とされている」支援物資のガザ地区への一刻も早い到着を祈り求めた。その上で、イスラエルとパレスチナが独立した2つの主権国家として平和的に共存する「2国家解決」の実現に向けたバチカンの姿勢を改めて表明。イスラエル人、パレスチナ人の双方が、希望の「明確な兆し」を必要としていると強調した。
その上で、「両国の政治当局が、国際社会の助けを借りて、両国のために正しい解決策に到達することを信じている」とし、「全ての人が、対話に、和解に、平和に『イエス』と言うことができますように」と述べた。