国連安全保障理事会が25日、4月10日ごろまで続くイスラム教のラマダン(断食月)期間中、パレスチナ自治区ガザ地区における即時停戦を求める決議案を採択したことを受け、国際キリスト教NGO「ワールド・ビジョン」は26日、声明を発表し、決議を歓迎した。
世界約100カ国で子どもの支援を中心に活動するワールド・ビジョンは、「全ての当事者がこの決議を受け入れることを祈ります」と表明。「(ガザ地区での)飢餓を回避するために、人道支援は今、それを切実に必要としている子どもたちに届けられなければなりません」と訴えた。
採択された決議案は、日本を含めた安保理の非常任理事国10カ国が共同で提出。▽長期的かつ持続的な停戦につながるラマダン期間中の即時停戦、▽人質全員の即時かつ無条件の解放、▽ガザ地区への支援物資流入の緊急拡大――を求める内容となっている。
常任理事国を含めた15カ国中、米国のみが棄権し、14カ国が賛成したことで採択された。米国はこれまで、外交交渉を損なうなどとして、「停戦」の文言を含むガザ地区関連の決議案に対し、4回にわたり拒否権を行使。一方、ロシアと中国も、米国が提出したガザ地区関連の決議案に対し、拒否権を2回用いている。
そのため、「停戦」の文言が含まれたガザ地区関連の決議案が安保理で採択されるのは、昨年10月に、同地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」とイスラエルの間の戦闘が始まって以来、これが初めてとなった。
ワールド・ビジョンのアンドリュー・モーリー総裁兼最高責任者(CEO)は、「想像を絶する痛みと苦しみの数カ月間で、数え切れないほどの命が打ち砕かれ、心が痛む状況です」と述べ、この5カ月余りの間に3万2千人を超える死者が出ているガザ地区の惨状に言及。「直ちに停戦を実施し、全ての人質を解放すべきです。命を救うための支援が、複数の国にまたがる紛争で何カ月も苦しんできた子どもたちに届けられなければなりません」と訴えた。
安保理の決議は、国連加盟国に対し法的拘束力があり、イスラエルには従う義務がある。一方、英公共放送BBCがマーク・ライアル・グラント元英国連大使の話として伝えたところによると、これに対してハマスは国家ではないため、法的拘束力が及ばないという。
そのため、イスラエルの首相官邸は声明で、停戦と人質解放を直接結び付けてきた米国のこれまでの立場を「放棄」したとして非難。人質解放に向けた取り組みにも影響が出るとした。また、予定していた米首都ワシントンへの代表団派遣も取りやめた。これに対し、ハマスは決議の歓迎を表明した。
聖公会の牧師でもあるモーリー氏は、今回の決議について「全ての紛争において、民間人、特に子どもが保護されなければならないという原則を再確立するための第一歩」だと指摘する。また、「この世代の子どもたちは、生涯にわたって身体的・精神的な傷を負うことになるのです」と述べ、既に多くの子どもたちが回復し難い傷を負っていることを強調し、次のように訴えた。
「子どもたちは、飢え、親を失うこと、家族を人質に取られるといったような激しい痛みを経験すべきではありません。武力衝突が終わったら、この紛争の影響を受けた子どもたちが、神から与えられた人生の可能性を実現し続けることができるように、私たち全員が声を上げる必要があります。私たちは、理解、癒やし、平和の新しい潮流を求める声を大きくして、誰も、どの側にいても、無差別殺戮(さつりく)に戻ることができないようにしなければなりません」