世界の子どもを支援するキリスト教国際NGO「ワールド・ビジョン」は8日、パレスチナ自治区ガザ地区で、4世帯に1世帯(50万人以上)が、飢餓の最も深刻なフェーズである「飢饉(ききん)」の状態にあり、さらに餓死する子どもたちが出ていることを受け、深い憂慮を示す声明を発表した。
ガザ地区は、食料不安を図る上で世界標準となっている5段階の「総合的食料安全保障レベル分類」(IPC)で、住民の100パーセントが昨年12月から今年2月までの期間、フェーズ3の「急性食料不安」以上にある。また、4人に3人がフェーズ4の「人道的危機」以上にあり、飢餓による死亡のリスクが急激に高まっている。さらに、4世帯に1世帯(50万人以上)が、最も深刻なフェーズ5の「飢饉」の状態にあり、壊滅的な飢餓に直面しているという。
世界食糧計画(WFP)によると、フェーズ5の「飢饉」は、「食料やその他の基本的なニーズを完全に満たすことができない状態を意味し、1万人のうち少なくとも2人が餓死または飢餓に関連する原因で病死」するとされる。
フェーズ5の「飢饉」が宣言されるのは、2017年の南スーダン以来。ワールド・ビジョンは、南スーダンでは宣言が出される前に100万人以上の子どもたちが既に急性栄養失調にあり、飢餓で命を落とした子どもたちの半数が宣言前に死亡していたことを指摘。「ガザ地区の子どもたちの命を救おうとするならば、これらの警告を真剣に受け止めなければなりません」としている。
英公共放送BBCによると、3月初旬にガザ地区北部の2つの病院を視察した世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は、子ども10人が餓死していたことを確認したと報告。子どもたちが「深刻なレベルの栄養失調」にあると警告した。
また、ガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」運営の同地区保健省は3日、テドロス氏が視察した病院の1つで、少なくとも子ども15人が栄養失調と脱水症状で死亡したと発表した。
ワールド・ビジョンのアンドリュー・モーリー総裁兼最高責任者(CEO)は、「子どもたちは、紛争によって受け入れがたいレベルの食料不安、栄養不良、飢えに追い込まれており、ガザ地区ほどこのことが顕著な場所は世界のどこにもありません」と強調。聖公会の牧師でもあるモーリー氏は、「影響を受けた子どもたちの数の多さは、胸が張り裂けそうであり、破滅的なものです」とし、「いかなる子どもも、このような恐ろしいレベルの飢餓を経験すべきではありません」と訴えている。
ワールド・ビジョンはキリスト教精神に基づき、貧困や紛争、自然災害などにより困難な状況で生きる子どもたちのために約100カ国で活動している。エルルサレム、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区ではそれぞれ1975年から活動を開始。ガザ地区では2016年以降、活動を行っていないが、ヨルダン川西岸地区では80人の専任スタッフが支援活動を続けている。
日本事務所であるワールド・ビジョン・ジャパンは現在、「パレスチナ緊急支援募金」を行っており、ホームページまたは電話(フリーダイヤル:0120・465・009、受付時間:午前9時~午後11時)で寄付を受け付けている。