パレスチナ自治区ガザ地区唯一のカトリック教会である聖家族教会の小教区内で16日、キリスト教徒の女性2人がイスラエル軍の狙撃兵に撃たれ死亡した。その他にも7人が負傷した。同教会を管轄するラテン典礼エルサレム総大司教庁が同日、声明(英語)を発表した。
声明によると、殺害されたのは、ナヒダさんとその娘のサマルさん。現地時間同日正午ごろ、小教区内の修道院まで歩いていたところを射殺された。バチカン・ニュース(日本語版)によると、ナヒダさんは高齢の女性で、サマルさんはナヒダさんを助けようとしたところを撃たれた。また、7人は小教区内の他の人々を守ろうとして撃たれ、負傷した。
総大司教庁は、事前の警告も通告もなかったとし、「2人は交戦者のいない小教区の敷地内で冷酷に撃たれた」とした。
また声明によると、この日朝には、小教区内にあるマザー・テレサが設立した「神の愛の宣教者会」の修道院を標的としたロケット弾が、イスラエル軍の戦車から撃ち込まれた。修道院には、障がい者54人が居住しており、この戦争が始まって以来、宗教施設として通告されていたという。
このロケット弾攻撃により、修道院唯一の電力源である発電機と燃料タンクが破壊された。さらに、その後もロケット弾2発が立て続けに撃ち込まれ、修道院は居住不能な状態になった。そのため、障がい者54人は住む場所を失い、生きるために必要な人口呼吸器を入手することもできない状況だという。
また、前日夜には、近隣地域へ激しい攻撃があり、小教区内で3人が負傷。ソーラーパネルと貯水タンクが破壊されるなどした。
バチカン・ニュースによると、イスラエル軍は、小教区内にロケット弾発射機が存在すると主張しているという。
総大司教庁は、「キリスト教共同体と共に祈りながら、われわれはこの無意味な悲劇に見舞われたご家族に寄り添い、哀悼の意を表します。同時に、教会全体がクリスマスを控える中、なぜこのような攻撃が行われたのか、理解に苦しむことを表明せざるを得ません」とした。
カトリックの慈善団体「エイド・トゥー・ザ・チャーチ・イン・ニード」(ACN)によると、ガザ地区には千人ほどのキリスト教徒が居住しているが、聖家族教会の小教区にはそのほとんどが避難しており、約750人が身を寄せているという。ACNは11日、空爆による破片で小教区内の建物に被害が出たことを伝えていた(関連記事:ガザ地区唯一のカトリック教会、空爆で一部被害 地区内のキリスト教徒の死者は22人)。