ぷろろーぐ
私の家は、居間と座敷がふすま一枚でつながっている。夏冬、エアコンをかけているのに、夫やまだ幼かった長男二男は、居間から出るたび、ふすまを開けたままにしていた。
「開けたら閉めてね」。そのたび私が注意していたら、ある日、息子がにこにこしながら現れ、「もう母さんが言わんでええようにしてあげたよ。こっち来て」。彼に手をひかれ行ったふすまには、青いクレヨンで大きく、「あけただ、しめる」と書いてあった。これが長男。
同じ頃、家族で回転寿司へ行った。もうひとりの息子が、メロンが欲しいと言う。見ると、お皿の色が違う。値段は高いのに、固くてまずそう。モッタイナイ。
私は彼の耳元でささやいた。「家帰ったら、冷蔵庫にスイカあるからね。メロンはやめとこうね」。息子は太陽のような笑顔になった。彼はスイカが大好物。そのあと、目の前にメロンの皿が回転してくるたび、それはうれしそうに、「めろん、ばいばい」と叫び続けた。これが、二男。
「めろん、ばいばい」のエピソードは、毎日新聞に投稿して採用されたことがある。「ボクのことが新聞に載った」と喜んでいた二男は、小学校中学年くらいから「母さんは、僕の恥を全国にさらした」と怒るようになった。ので、私はこれから連載させていただくエッセイの中で、長男を息子A、二男のことを息子Bと呼ぶことにする。もうすぐ25歳、26歳になる息子たちとの良好な関係のために。
息子A&Bは、ふたりとも日曜日に生まれた。いつもなら教会へ行って礼拝している時間に、私は陣痛に襲われていたわけで。
(文・しらかわひろこ)