「あなたがたの間で偉くなりたいと思う者は、みなに仕える者になりなさい」(マタイ20:26)
リーダーに求められる資質とは何でしょうか。もちろん多くの資質が求められますが、次の2つの資質を欠いている優れたリーダーというものは存在しません。
(1)将来を見通す眼
昔、谷合に住んでいるインディアンの部族がいました。酋長はすでに高齢に達し、次のリーダーを選ぶ時期が来ていました。そこで酋長は優秀な3人の若者を集めて次のように言いました。
「お前たちの中から次のリーダーを選びたいと思う。そこでお前たちは、あの東に高くそびえる山の頂に登り、そしてそこに登ったという証拠を持ってきて欲しい」。3人の若者は険しい山に挑戦し、全員無事に帰ってきました。
最初の若者は登ってきた証拠として、山頂に実る世にも美味しい果実の実を1つもいで来ました。2番目の若者は、山頂に咲き乱れている、現実の苦しみ、悩みを忘れさせるという美しい花を1輪持って帰ってきました。
3番目の若者も帰ってきましたが、手に何も持っていません。酋長が「山に登ったという証拠は?」と尋ねると、彼はこう答えました。
「私は山の頂から、山の向こう側に豊かな牧草地があるのを見ました。私たちはあの地に移住すべきだと思います」
彼の視点は、将来に向けられていたのです。彼はリーダーに求められる資質である「将来を見通す眼」を持っていたのです。そして、彼が次のリーダーに選ばれたのは言うまでもありません。
(2)喜んで人に仕える心
古代ペルシャに伝わるお話です。ある国に3人の王子がいました。それぞれが素晴らしい宝物を持っていました。長男はどんな遠くのものでも見ることのできる望遠鏡。次男はどこへでも飛んでいける空飛ぶじゅうたん。三男は、どんな病気でもそれを食べれば治るといわれるリンゴ。
ある時、お城の屋上から長男が望遠鏡を覗いていたら、遠くの国の、一人の美しいお姫様が病気で苦しんでいる様子が見えました。そして町中にお触書が貼ってあり、「娘の病気を治した者と娘を結婚させる。王より」と書いてあります。
早速3人の王子は、次男の空飛ぶじゅうたんに乗り、出かけていきました。そして三男の差し出したリンゴを食べたお姫様はすぐに元気になり、立ち上がりました。王様も大層喜んで3人の王子に感謝しました。しかし、ここで1つの問題が起こりました。お姫様と結婚できるのは1人だけです。3人の王子はそれぞれ、自分こそ結婚相手として相応しいと主張します。長男は「そもそも私の望遠鏡がなかったら、この事は始まっていないのだから、私が結婚すべきである」と言い、次男は「私の空飛ぶじゅうたんがなかったら、ここまで来ることはできなかったのだから、私こそ相応しい」と言い、三男も「ここまで来ても、私のリンゴがなければ治らなかったのだから、私こそ結婚相手である」と言い、王様も困ってしまいました。
しかし、その時1人の老人が来て3人の内の誰が一番相応しいかを指摘し、その理由も話しました。すると全員が納得しました。
さて、ここで質問です。お姫様は誰と結婚したのでしょうか。そして誰もが納得したその理由とは何でしょうか。
答えは、お姫様は三男の王子と結婚しました。その理由は、この王子だけが自分の大切な宝物を失ってしまったからです。他の2人の王子の宝物は、再び使うチャンスがあります。3番目の王子こそが、最も大きな犠牲を払ってお姫様を助けたのです。
真のリーダーは、決して上から権力をふるう人ではありません。皆に仕える心を持ち、最も多くの犠牲を払える人が真のリーダーと言えます。
「人の子(イエス・キリスト)が来たのは、仕えられるためではなく、かえって仕えるためであり、また、多くの人のための贖いの代価として、自分のいのちを与えるためである」(マタイ20:28)
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