2018年、本紙は国内外のキリスト教界のニュースや寄稿・コラムを1300本以上配信してきた。その中から、アクセス数に基づいた10大ニュース(国内編)を発表する。(国際編はこちら)
【10位】無牧教会と赴任先を探す牧師の橋渡し役に 「無牧ミニストリーズ」が始動
全国にあるプロテスタント教会約7900のうち、無牧の教会は約300あり、兼牧のケースを含めると、専任牧師がいない教会は千余りに上る(全国の教会の13パーセント)。そのような状況を受け、牧師を必要とする無牧の教会と、赴任先を探す牧師の橋渡しをしようと、「無牧ミニストリーズ」が始動した。立ち上げたのは、幸町キリスト教会(茨城県)の栗﨑路(あゆみ)牧師で、同教会も栗﨑牧師が赴任する前は約2年間無牧だった。
万座温泉日進舘(群馬県)会長の泉堅(いずみ・けん、本名・黒岩堅一=くろいわ・けんいち)氏が7月、出張先の京都で急性心不全のため急逝した。非常に伝道熱心で、同館のホールで毎週チャペルタイムを開き、全国から牧師やクリスチャンアーティストを招いて宿泊客に福音を伝えていた。8月にはウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会(東京都)でお別れの会が開催され、キリスト教界の多くの関係者が参加した(記事)。
【8位】ゴスペル界の第一人者、亀渕友香さん「お別れの会」に500人 遺作「ハレルヤ」も披露
日本にゴスペル音楽を広める先駆けとなったゴスペル歌手の亀渕友香(ゆか、本名・捷子=かつこ)さんが昨年10月に亡くなり、お別れの会が1月、ホテルニューオータニ(東京都)で開催された。約500人が参加し、亀渕さんに洗礼を授けた兼瀬清志牧師がメッセージを伝えた。遺作「ハレルヤ」も披露され、日本ゴスペル音楽協会は亀渕さんをゴスペル音楽の殿堂第1号として認定した。
【7位】榎本てる子・関学神学部准教授、召天 55歳 ちいろば牧師の娘
「ちいろば牧師」で知られる榎本保郎牧師の娘で、関西学院大学神学部准教授(実践神学)の榎本てる子氏が4月、京都市内の病院で亡くなった。
【6位】倉敷市真備町の大規模冠水で千人孤立、信徒宅も被害に 床下浸水の近隣教会も
記録的な豪雨が7月上旬、西日本を襲い、教会も被害を受けた。特に岡山、広島、愛媛の各県での被害が甚大で、ハンガーゼロ(日本国際飢餓対策機構)や神戸国際支縁機構、カリタスジャパン、九州キリスト災害支援センター、救世軍、グッドネーバーズ・ジャパンなど、キリスト教の各種団体も支援活動に乗り出し、地域の超教派グループや教派・教団単位での支援も行われた。本紙は西日本豪雨の特集を組み、7月から8月にかけて10本以上の記事を配信して活動の状況を伝えた。
【5位】オウム幹部の死刑執行、なぜそれでも死刑に反対なのか 進藤龍也
地下鉄サリン事件(1995年)などを引き起こしたオウム真理教の元代表、麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚ら、死刑が確定していた教団元幹部13人全員の死刑が7月、2回に分けて執行された。日本のキリスト教界は死刑自体に反対する声が多く、教団元幹部の死刑を一斉に執行したことについて、日本カトリック正義と平和協議会は抗議声明を発表。受刑者の更生や就労支援を行うNPO「マザーハウス」理事長の五十嵐弘志氏も、死刑に反対する寄稿を本紙に寄せた。
【4位】金メダリストが戦下の宣教師に 名作「炎のランナー」のその後を描く「最後のランナー」予告編解禁
自身のキリスト信仰から、日曜日に行われる競技を棄権するも、別種目で劇的な優勝を果たした英国のオリンピック金メダリスト、エリック・リデル。その実話を描いた「炎のランナー」(1981年)の続編的作品である「最後のランナー」が7月、日本で公開された。「炎のランナー」はエリックの信仰的側面が評価され、日本の多くの教会は当時、映画会などで用いた。その続きを描いた作品ということもあり、注目が集まった。青木保憲牧師はその映画評で「エリックの信仰的な側面がより色濃く出ていることは好感が持てた」と述べている。
【3位】新共同訳、無料聖書アプリ「ユーバージョン」で利用可能に 音読機能も
日本の教会で最も広く用いられている「新共同訳」が3月から、無料の聖書アプリ「YouVersion(ユーバージョン)」で利用可能になった。ユーバージョンはダウンロード数が3億を超える人気アプリで、1200言語1700訳以上の聖書がすべて無料で利用できる。これまで提供されていた日本語訳聖書は「口語訳」と「リビングバイブル」の2つのみだった。一方、12月には、カトリック・プロテスタント共同による聖書としては、「新共同訳」以来31年ぶりとなる新しい日本語訳聖書「聖書協会共同訳」が発売され、発行する日本聖書協会が記者会見を開いた(記事)。
【2位】映画「パウロ キリストの使徒」予告編公開、主演は「パッション」イエス役のジム・カヴィーゼル
パウロの生涯を使徒ルカの視点で描いた映画「パウロ」が3月、米国で公開された。日本では11月に公開され、初日には松任谷由実さんの夫で音楽プロデューサーの松任谷正隆さんによるトークイベントも開催された(記事)。当時キリスト教界でも大きな反響を呼んだメル・ギブソン監督の「パッション」(2004年)で、イエス・キリスト役を演じたジム・カヴィーゼルが主演を務めたことも大きな注目を集めた。本紙は米国公開時から、本作についてさまざまな記事を掲載。青木牧師とワーナー・ブラザーズ映画元製作室長の小川政弘氏による対談でも本作が話題の一つとして取り上げられた。
ローマ教皇フランシスコは5月、カトリック大阪教区の前田万葉(まんよう)大司教ら14人を枢機卿に任命した。日本人枢機卿は、故濱尾文郎枢機卿に次いで6人目。故白柳誠一枢機卿が2009年に亡くなって以来の日本人枢機卿となった。枢機卿が教皇に次ぐ地位であることから、国内の一般メディアも大きく取り上げた。前田枢機卿は長崎県新上五島町生まれで、潜伏キリシタンを先祖に持ち、中には殉教者もいる。一方、母親は長崎で被爆しており、自身は被爆2世。叙任式は6月にバチカンで行われ、12月に日本の訪問団と共に教皇と面会した際には、来年末にも被爆地の広島、長崎を訪問したいとする意向を教皇から伝えられた(記事)。
【番外】カトリック中央協議会が教皇の英語版ツイッターを日本語に翻訳して配信していたツイッターアカウント「教皇フランシスコ(邦訳)」が8月、一時凍結される事態があった(記事)。すぐに回復したものの、「ツイッター社が教皇のアカウントを凍結したのか」として、大きな注目を集めた。また、父と娘を自死で亡くした進藤龍也牧師のインタビューや、エホバの証人と統一協会の親に育てられた著者らによる本2冊を紹介した書評も、長期にわたってアクセスが続いた。論説・コラムでは、8月から始まった「京大式・聖書ギリシャ語入門」が最もアクセスが多く、三谷和司牧師による「福音の回復」、山崎純二氏による「21世紀の神学」などの人気が高かった。