自身のキリスト信仰から、日曜日に行われる競技を棄権するも、別種目で劇的な優勝を果たした英国のオリンピック金メダリスト、エリック・リデル。その実話を描いた「炎のランナー」(1981年)は世界中の感動を集め、アカデミー賞4部門を受賞した。一躍英雄となったリデルだが、メダル獲得の翌年には、宣教師として自身の出生地である中国へ渡る。アスリート引退後も、宣教師として走り続けた男の軌跡を描く「最後のランナー」がこの夏、日本でも公開されることが決まり、予告編が10日、ついに解禁された。
1902年、スコットランド人宣教師の両親の元、中国東部の天津で生まれたリデルは、6歳まで現地で育つ。学校へ通うため母国へ帰国。大学生時代にアスリートとしての才能を開花させ、24年のパリ・オリンピックに英国代表として出場する。出場種目は男子100メートル走だったが、競技が日曜日に行われることを知る。安息日である日曜日には出場できないとし、急きょ400メートル走に変更。誰も予想しなかった金メダルを世界新記録で獲得し、一躍英雄となった。
「最後のランナー」は、この感動的なエピソードを描いた「炎のランナー」のその後の物語を描く。オリンピック翌年、両親と同じ宣教師として天津に渡ったリデルは、カナダ人宣教師のフローレンスと結婚。2人の娘も生まれる。しかし日中戦争が勃発。天津は日本軍に占領される。妊娠中のフローレンスと娘2人はカナダに送り返すが、リデルは「人助けに来たのに逃げ出せない」と一人残る。持ち物も没収され、中国人の避難者たちと赴任先の学校で生活するが、戦況は悪化の一途をたどる。そして、とうとう太平洋戦争に突入し、リデルは他の欧米民間人と共に収容所に収監されてしまう。
過酷な収容所生活のため衰弱しきったリデルだが、病気で薬を必要とする仲間のために、日本軍の少佐に「最後のレース」を挑む。誰もが勝ち目はないと思っていたが、収容者たち全員が祈る中、奇跡が起こる。しかしその先には、戦争の現実を思い知らされるような悲劇が――。
予告編では、中国でも人々を励ますために走るリデル、家族との別れ、戦争の悲しい現実、見守る仲間から「あなたは希望の星だ」と声援を受け、収容所内でも全力で走り続けた元金メダリストの姿が描かれている。
リデルを演じるのは、アカデミー賞7部門を制した「恋に落ちたシェイクスピア」(1998年)で、ウィリアム・シェイクスピア役を演じた英国人俳優のジョセフ・ファインズ。2人の監督による共同作で、中国、香港、米国で撮影された。7月14日(土)有楽町スバル座ほか全国順次公開。
■ 映画「最後のランナー」予告編