インターネットでキリスト教オーディオドラマを配信している「この指ドラマネット」(以下「この指」)。これまで多くの作品を生み出してきたが、今、「この指」初となる長編4部作「日本を愛した神の人 スティーヴン・メトカフ物語」の制作に取り組んでいる。その第2部の収録が2月28日、日本バプテスト教会連合練馬バプテスト教会(東京都練馬区)で行われた。
日本を愛し、日本のために一生をささげた英国人宣教師スティーヴン・メトカフ氏(1927~2014)。映画「炎のランナー」の主人公エリック・リデルと出会って敵を赦(ゆる)すことを教えられたその生涯は『闇に輝くともしびを継いで』(いのちのことば社)でも紹介されたが、新たにさまざまな資料をもとに、一部フィクションを交えてドラマ化された。
これまで「この指」では、伝記作品に関しては、シカゴのホームレス救済団体パシフィック・ガーデン・ミッション(PGM)が制作したノンフィクション福音オーディオドラマを日本語に翻訳して作ることが多かったが、これは1から自分たちで作り上げた完全なオリジナルだ。
月1回の収録の日、夜7時を過ぎる頃になると、ほとんどのメンバーが集まり、ディレクターの小川政弘さん(同東京中央バプテスト教会会員)の呼び掛けに応じて本読みが始まる。もともと俳優志望で、ワーナー・ブラザース映画の元製作室長だった小川さんは、脚本、演出、出演と3役をこなす。小川さんの手元には分厚い日本語の発音アクセント辞典が置かれ、本読みの間中、少しでもあいまいなイントネーションがあると、すかさず調べて確認し、それぞれの配役に対してこまやかな指示を与える。
出演者10人のうち、演技の経験があるのは小川さんをはじめ3人だけ。その他の人は全くのアマチュアで参加し、「この指」での収録を経験していく中で演技力を身に着けていった。「小川さんにしごかれて、しごかれて、ここまで成長しました」というメンバーの言葉に大きな笑いが起こる。臨場感を伝えるための表現力、棒読みから抜け出すことの大変さなど、演じることの難しさを話す一方で、メンバーそれぞれが感じているのは神様の恵みだ。
メンバーの1人はこう語る。「(演じていて)すごく恵まれます。聖書の話を伝えるストーリーはどれも素晴らしい。平日の夜、仕事で疲弊した中であっても、御言葉ですごく癒やされるので、自分へのご褒美のような気持ちで参加しています。また、それを聞いてくれる人も私と同じように癒やされるといいなと思っています」
「この指」は、1975年に日本バプテスト教会連合のラジオ放送伝道として始まり、KTWR短波放送「この指とまれ」を経て、超教派の有志による「福音ネット伝道協力会(FNDK)」として現在の形になった。小川さんと立ち上げ当初から活動を共にするのは、同拝島バプテスト教会の飯島勅(さとる)協力牧師と、同上福岡バプテスト教会の荒木寛二牧師。
飯島牧師は、「忘れてならないのは、私たちが伝道団体であり、イエス様の福音を伝え、人々の救いにあずかりたいという願いからこの働きを始めたということです。今もその思いを持って続けています」と語った。また荒木牧師は、「私たちは高齢者なので、ネット社会について行けない面がありますが、それでも共に活動できるのは、『福音を伝えたい』という共通した思いがあるからでしょう」と言う。
小川さんは40年の歩みを振り返って次のように話した。「1975年に『この指』を立ち上げてから、これまで100人近くの人が『この指』に止まってくれました。メンバーが減り、やっていけるかなと心配になった時もありましたが、不思議に神様は新しい力(メンバー)を与えてくださいました」
また今回の作品について、「オリジナル脚本による初めての4部作。『この指』の1つの記念となる作品が、皆の力でできたことが本当にうれしく思います」とメンバーへの感謝を語った。
「私は放送伝道で救われたので、これからもこの働きを通して人々に福音を伝えていくことに生涯をささげたいと思っています。そして、私の跡に続く人がメンバーの中から育ってほしいですね」
この日収録したものは翌日には編集され、「この指」のコンテンツの1つ「この指ドラマ館」で公開される。第3部の収録は3月28日を予定している。