インターネット放送伝道サイト「この指ドラマネット」には、オーディオドラマを中心とした元気になれるさまざまなオーディオコンテンツが、ぎっしり詰まっている。
番組に自らも出演しているディレクターの小川政弘さん(東京中央バプテスト教会会員)は、心地よく響く低音ボイスの持ち主だ。もともと俳優志望で、若い頃は劇団にも所属していた。しかし、練習が日曜日と重なり、なかなか日曜礼拝を守れず、「もし神様が将来このタラントを用いるおつもりなら、その道も備えてくださるだろう」と信じて演劇の道を断念した。
こうして一度神に委ねたタラントが再び用いられる機会が与えられたのは、今から40年前。1975年に、ラジオ福音放送『この指とまれ』が始まった時だった。ドラマを中心とした番組を作ろうということで、演劇の経験がある小川さんに白羽の矢が立った。この番組は、日本バプテスト教会連合のラジオ放送伝道として始まり、1980年5月からは、KTWR短波放送『この指とまれ』として2000年まで続いた。その後、短波放送を離れ、超教派の有志による「福音ネット伝道協力会(FNDK)」として、インターネットの放送伝道へと移行することになった。
長年親しんできた短波放送からインターネットの世界に移行することについて、小川さんに不安はなかったという。『この指とまれ』のメンバーの中に、自分でホームページを作成できるほどITに強いメンバーがいたこと、そして何よりも、「メディアがどう変わろうとも放送伝道の道は消されない」と、これまでの道を備えてくださった神への信頼があったという。最初は「福音ネット」というサイトを作り活動を始めたが、その後新たに現在の「この指ドラマネット」を立ち上げ、より聞きやすく、楽しめるサイトとなった。
〈この指ドラマ館〉〈イエスに出会った人々〉〈朗読の部屋〉〈解き放たれた人生!〉が、「この指ドラマネット」の4大コンテンツ。オリジナルのオーディオドラマを提供する〈この指ドラマ館〉では、小川さんとスタッフたちが、聖書をベースに脚本を作ってきた。これまで制作したドラマの数は、ラジオ放送時と合わせると300本を超えるが、現在でも年に1、2本の新作を作っているという。
〈イエスに出会った人々〉は、全て小川さんの書き下ろし脚本による聖書人物伝。それが一段落したら、「神を見た人々」として 旧約聖書の話も扱っていきたいと意欲は十分。ドラマのBGMは著作権フリーでそれぞれの内容に合うものをインターネットなどから探しているが、〈朗読の部屋〉のテーマ曲はスタッフのオリジナル。
「この指ドラマネット」の最大の魅力は、身近な話題を扱ったドラマと、ドラマチックな聖書の朗読だ。クリスチャンでない人も引き込まれ、聖書のみことばが自然に伝わってくる内容になっている。聖書を朗読する〈朗読の部屋〉では、聖書を同じ調子で読むのではなく、登場人物ごとに声音を変えて、感情を入れて読むようにしている。「通常のような聖書の朗読にはしたくなった。本来、聖書の言葉はもっと生き生き伝えるべき」と小川さん。全て小川さんが一人で演じ分けており、「こういったところに若いころ志した演劇の経験が生かされている」と言う。
現在スタッフは10人。最近、1組の親子がスタッフに加わった。劇団で子役をしている娘のタラントを証しのため御局で使ってもらえないかとBBN聖書放送に問い合わせたところ、「この指ドラマネット」のドラマがBBNで放送されていることもあり、紹介されたという。世界中が「ネットでつながっている」と実感する出来事だったという。
〈解き放たれた人生!〉は、もともとはシカゴのホームレス救済団体「パシフィック・ガーデン・ミッション」(PGM)が、世界各国語で制作・放送してきたノンフィクションの福音オーディオドラマの日本語版。PGMが、日本語に翻訳ができ、ドラマ化できるクリスチャングループを数年にわたって探していたところ、映画会社で翻訳の仕事をしていた小川さんと、「この指ドラマネット」のメンバーにたどり着いたのだ。
小川さんは、今後も「この指ドラマネット」の4大コンテンツをさらに充実させたいという。一方で、バトンタッチができる後継者を育てていければとも話す。
そして、「インターネットの良さは、クリック一つで世界とつながること。神様が与えてくださったこの利点を最大限有効に用いて、これからも一人でも多くの人に『この指ドラマネット』を通して福音を届けていきたい」と、放送伝道にかける揺るぎない気持ちを、静かな口調でありながらも情熱を込めて語った。