
カトリック教会のトップであるローマ教皇フランシスコが21日、88歳で死去した。肺炎などのために40日近く入院し、3月末に退院したばかりだったが、前日の20日には、サンピエトロ大聖堂のバルコニーから姿を見せ、伝統的なイースター(復活祭)の祝福を行っていた。
ホルヘ・マリオ・ベルゴリオを本名とする教皇フランシスコは、1936年にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで生まれた。21歳でイエズス会に入会し、ブエノスアイレス大司教、枢機卿などを経て、前任のローマ教皇ベネディクト16世の退位後、2013年3月に中南米出身初の教皇として就任した。
教皇の死は、カトリックだけでなく、さまざまな神学的背景を持つプロテスタントを含め、全世界のキリスト教指導者や著名人からの反応をもたらした。以下に、教皇の死に対する著名なキリスト教指導者7人の反応を紹介する。
1. フランクリン・グラハム

ビリー・グラハム伝道協会(BGEA)と福音主義支援団体「サマリタンズ・パース」の総裁で、伝説的な大衆伝道者、ビリー・グラハム氏の息子であるフランクリン・グラハム氏は、自身のフェイスブック(英語)に、哀悼の意を表明する投稿をした。
「教皇フランシスコは健康問題と闘った末、今朝お亡くなりになりました。教皇はこの数日間、幾人かと面会の時を持ち、バチカン(ローマ教皇庁)の聖週間行事の一部に出席することができました。昨年、ナポリに説教に行ったとき、教皇と会って話す機会がありました。次の教皇を選ぶプロセスを始めるカトリック教会のためにお祈りください」
グラハム氏は、投稿に教皇と握手する自身の写真も添えた。
2. エリザベス・イートン

米国福音ルーテル教会(ELCA)のエリザベス・イートン総裁監督は、教皇の司牧活動を称賛し、哀悼の意を表する声明(英語)を発表した。
「教皇フランシスコは、知恵、勇気、謙虚さをもって、キリストの教会に仕えました。教皇は司牧活動を通じて、全ての人々と被造物に、神の正義と平和の道具として仕えました」
「教皇の在位期間は、気候上の正義のための明確な行動の呼びかけ、教派間・宗教間対話への大胆な取り組み、複雑な社会問題への慈悲深い対応、そして世界的な右派ポピュリズムの台頭とその最も脆弱(ぜいじゃく)な人々への影響に対する明確な懸念によって記憶されることでしょう」
また、イートン総裁監督は、「義認の教理に関する共同宣言」の推進など、教皇の在位中に実施されたルーテル派とカトリック教会の対話努力を強調した。
3. ティモシー・ドラン

2013年に教皇フランシスコを選出したコンクラーベ(教皇選挙)のメンバーの一人であるニューヨーク大司教のティモシー・ドラン枢機卿は、全ての信仰を持つ人々に教皇の死を悼むよう呼びかける声明(英語)を発表した。
「私は世界中の人々と共に、カトリック信徒だけでなく、あらゆる信仰を持つ人や信仰を持たない人と共に、今朝、私たちの愛する教皇フランシスコの死を悼みます」
「教皇フランシスコの最後の公の登場が、彼が深く愛していたイエスの復活の喜びを祝うイースターの日曜日であり、また教皇が深く愛していたユダヤ教の兄弟姉妹が過越(すぎこし)祭を終えた直後だったことは、まさにふさわしいことでした」
その上でドラン枢機卿は、教皇は「その謙虚な奉仕者の心で、私たち全員の心に触れました」と述べた。
4. ショーン・ロウ

米国聖公会のショーン・ロウ総裁主教は声明(英語)で、「キリストにある兄弟、教皇フランシスコの死に、私の心は重く沈んでいます」と述べた。
「その生涯と奉仕を通じて、教皇は福音の証人であり、貧しい人々や社会から疎外された人々の擁護者でした。私は特に、教皇の最近の移民や難民のための力強い支援に感謝しています」
「カトリック教会の教皇であった12年の間、教皇は私たちの環境神学を変革し、LGBTQ+の人々が教会で声を聞かれ、認められ、受け入れられる必要性について認めました」
ロー総裁主教はまた、教皇が推進した教派間対話にも言及し、その一例として米国における聖公会とカトリック教会の神学対話を挙げた。
5. ジョニー・ムーア

福音派の指導者として知られるキリスト教指導者会議(CCL)のジョニー・ムーア議長は、自身のX(旧ツイッター、英語)に長文のコメントを投稿。福音派の人々に、「教皇フランシスコの死を悼み、後継者を選ぶ準備を進めているカトリック教会のためにお祈りください」と訴えた。
ムーア氏は、教皇が2019年に、歴代の教皇として初めてアラビア半島を訪問し、アラブ首長国連邦(UAE)を訪れた際に同行したことに触れ、次のように述べた。
「カトリックとイスラム諸国の橋渡しに尽力した教皇の歴史的な努力に、心から感謝しています。この努力は、全てのキリスト教徒に恩恵をもたらしました。私の見解では、これが教皇の最大の遺産です」
米政府の諮問機関である米国際宗教自由委員会(USCIRF)の元委員でもあるムーア氏は、教皇を「迫害されるキリスト教徒の粘り強い擁護者」と評し、特に過激派組織「イスラム国」(IS)の最盛期におけるイラクとシリアのキリスト教徒への支援を強調した。
「在位中、教皇が首にかけていた十字架は、イラクのモスルで殉教した神父がかつて着用していたものでした。教皇は毎日、迫害された教会の記憶を胸に抱えていました」
6. ジェリー・ピレイ

世界教会協議会(WCC)のジェリー・ピレイ総幹事は声明(英語)で、次のように述べた。
「教皇フランシスコの死は、世界中で、特にエキュメニカル運動やWCCの世界的な共同体における多くの協力者や支持者たちによって悲しまれるでしょう。教皇の在位は、エキュメニカル運動にとって大きな贈り物であり、教皇はキリスト教の統一と和解に向けた私たちの努力における献身的な協力者であり、教皇の声は平和、環境、正義のための預言的な声でした」
WCCは声明で、同性愛者に対し歓迎的な姿勢を示したり、離婚したカトリック信徒の教会復帰を歓迎したりする教皇の司牧的アプローチが、一部の層の反発を招き、カトリック教会の教えに対する妥協だとして批判を受けたことに言及。しかし最終的には、中絶や避妊、女性の司祭や助祭への叙階、ジェンダーイデオロギーなどに反対し、カトリック教会の従来の教えに対し非常に一貫した姿勢を貫いたと伝えた。ピレイ総幹事は、教皇のこうした姿勢について次のように述べた。
「教皇の言葉と行動の一部は、一部の人々をイライラさせたり驚かせたりしたかもしれませんが、教皇の勇気とリーダーシップは確かに感謝されています。権力に対して真実を語り、政治問題に対して声を上げるその能力は、一部の人々の眉をひそめさせたかもしれませんが、その預言的な証言はエキュメニカルな運動における贈り物でした」
7. サミュエル・ロドリゲス

全米ヒスパニック・キリスト教指導者会議(NHCLC)のサミュエル・ロドリゲス会長は、自身のX(英語)に哀悼のメッセージを投稿した。
「私たちは、信仰の先見の明のある指導者であり、疎外された人々の熱心な擁護者であった教皇フランシスコの死を悼みます」
「教皇の生涯は希望の証しでした。希望とは、教会が暗闇の世界の中で光の灯台として輝くことができるという希望です。今、そのメッセージはこれまで以上に必要とされています。そして今日、私たちはその最も堅固な擁護者の一人を失いました」
ロドリゲス氏と教皇は、2016年に米首都ワシントンで開催された福音派のイベント「トゥギャザー2016」で共に講演を行ったことがある。教皇はこの際、ビデオメッセージを通じて参加した。
教皇の葬儀は26日、バチカンのサンピエトロ広場で行われる予定。各国首脳を含め、数十万人が参列すると予想されている。