北朝鮮の最高指導者、金正恩 (キム・ジョンウン)氏はキリスト教に対する嫌悪感をさらに強め、今年のクリスマスには、北朝鮮国民に対して、イエス・キリストではなく、金正恩氏の祖母、故・金正淑(キム・ジョンスク)の誕生を祝うように強要した。
金正淑は、1919年12月24日のクリスマスイブに生まれ、米ニューヨーク・ポスト紙によると、抗日ゲリラ隊員で共産党活動家であった。北朝鮮の1代目の独裁指導者である故・金日成(キム・イルソン)の妻となり、元最高指導者の故・金正日(キム・ジョンイル)らを産んだ。
金正淑は、北朝鮮では「革命の聖母」と呼ばれ、32歳だった1949年に、不可解な状況で死亡した。毎年クリスマスになると、金正恩氏は彼女の墓を訪れて敬意を表すよう、国民に命じている。
一方、金正恩氏は今年、北朝鮮でクリスマスを祝うことを禁じたと伝えられている。2014年には、韓国が北朝鮮との国境近くに巨大なクリスマスツリーを建てることを計画していることを知り、ツリーを建てれば、全面戦争になると言って脅していた。この巨大ツリーは結局、設置されることはなかった。
しかし同紙によると、金正恩氏がクリスマスツリーを嫌悪しているにもかかわらず、首都・平壌では幾つかのツリーを見ることができるという。ツリーは主に、高級ショップや高級レストランに設置されているが、政府当局の監視を煽(あお)り立てないよう、宗教的シンボルはいっさい付けられていない。
人権団体などによると、北朝鮮政府は現在、約7万人のキリスト教徒を、思想・政治犯として投獄しており、こうした弾圧は1950年代から始まったと報告されている。
米国のシンクタンク上級研究員であるドウ・バンドー氏は10月、米ビジネス誌「ホーブス」で、「北朝鮮は、宗教を信じている者を見せしめのように扱いますが、特にキリスト教徒に対しては敵意を持って扱います」と述べている。また、「今日、30万〜50万人のキリスト教徒が北朝鮮にいると考えられています。脱北者の報告によると、隠れて行われているキリスト教の集会に参加したことがある人は、人口の1・2パーセント、目撃したことがある人は5・1パーセント程度です」と書いている。