日本の葬儀にはさまざまなスタイルがありますが、最近、音楽葬が注目されています。音楽葬とは葬儀のプログラムに歌や楽器の演奏を数多く取り入れ、音楽を通して故人を偲び、参列者を慰めるものとされています。
確かに葬儀の場で、故人の好きだった曲のメロディーが流れるなら、故人の生涯を思い起こし、悲しみの中にも感謝があふれ、慰めが満ちるものだと思います。
しかし、実は、音楽の力はそれだけにとどまるものではありません。音楽には、目には見えない永遠の世界、つまり「天国」を指し示す力があり、音楽を通して、故人を失った悲しみや寂しさを乗り越え、永遠に続く希望が与えられるのです。
ですから、これらの音楽の力を引き出し、品質の高い音楽葬を届けるためには、葬儀のプログラム、音楽家、司式者を整えることが、とても重要になります。目には見えない「天国」の祝福を、悲しみの中にある遺族や参列者の心に届ける、大切な役割を担うからです。
棺のふたを閉めるとき
人は召されるとき、弱さの中で、別れの言葉を交わす機会は少ないように思います。かつては家族に囲まれて息を引き取るのが普通でしたが、最近は、同じ家に住むことは少なく、弱さを重ねて病院で召されることが多くなりました。
それぞれが、故人との別れを徐々に実感していきますが、別れの節目となる葬儀の場はつらさが身に染みてきます。出棺に備え、棺のふたを閉めるとき、やり場のない寂しさが心に迫ります。しかし同時に、その場は親しい人たちと心を合わせ、天国の希望を分かち合う貴重な時にもなるのです。
その場に、故人との別れにふさわしい音楽や司式者(牧師)が導く祈りがあるなら、別れの寂しさや悲しさを慰め、目には見えなくとも、確かに存在する「天国」の祝福が、棺を囲む一人一人に舞い降りてくるのです。
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