東京地裁は25日、世界平和統一家庭連合(旧統一協会)に対し宗教法人法に基づく解散命令を出す決定をした。同協会が同日、ホームページで明らかにした。
旧統一協会を巡っては、文科省が2023年10月、1980年頃から長期的・継続的に多数の人々に対し、高額献金や霊感商法により多額の被害を被らせてきたとして、宗教法人としての解散命令を東京地裁に請求していた。
文科省は請求決定時、旧統一協会側の損害賠償責任を認めた民事訴訟の判決が、把握する限りで32件あり、1審までの被害者総数は169人、認められた被害総額は約22億円に上ると主張。さらに、訴訟上の和解や訴訟外の示談を加えると、被害者総数は約1550人に上り、解決金などの総額は約204億円に上るとしていた。
これに対し、旧統一協会は、信者に法令遵守の徹底を求めた2009年の「コンプライアンス宣言」以降、改革に取り組み、被害の訴えは大幅に減少したと主張。文科省が指摘するような法令違反はないとし、宗教団体の目的を著しく逸脱しているという主張は誤りだなどと反論していた。
NHKによると、阿部俊子文科相は決定を受け、「私どもの主張が認められたものと受け止めている。文科省としては、旧統一協会への対応について、引き続き万全を期していく」とするコメントを出した。
一方、旧統一協会は「誠に遺憾ではありますが、今回の判決内容を重く受け止めつつ、東京高裁への即時抗告を検討して行く所存です」とするコメントをホームページに掲載。「当法人としては到底、承服できるものではありません」とした上で、今回の決定により、信者に対する不当な差別が起こることがないよう求めるなどとした。
解散請求を巡る審理は法律に基づき非公開で行われた。旧統一協会は即時抗告できるが、東京高裁が東京地裁の決定を支持すれば、その時点で解散命令は効力を持ち、清算手続きが開始される。最高裁に特別抗告した場合も精算手続きは続き、解散命令の判断が覆れば停止される。
解散命令により宗教法人格を失うと、税制上の優遇を受けられなくなる。ただし、その後も任意の宗教団体としては活動を継続することができる。
過去に解散命令を受けたのは、地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教と、個人面談で多額の金銭をだまし取り幹部らが逮捕された明覚寺の2つの宗教法人のみ。この2件はいずれも刑法違反が根拠とされたが、旧統一協会に関しては、幹部らが逮捕された事例はなく、民法上の不法行為が理由とされた。
この点は一つの争点となっていたが、最高裁は3月初め、文科省の質問権の行使に適切に回答しなかったとして旧統一協会に過料10万円を命じた決定の中で、民法上の不法行為も解散命令の要件に含まれるとする判断を初めて示していた。