盛山正仁文部科学相は12日、臨時記者会見を開き、世界平和統一家庭連合(旧統一協会)に対する宗教法人法に基づく解散命令を請求することを正式に決定したと発表した。請求は13日以降、準備ができ次第速やかに東京地裁に対して行う方針。
盛山氏は会見で、解散命令の請求を決めるに至った経緯や理由について説明。旧統一協会は遅くとも1980年ごろから長期かつ継続的に多数の人々に対し、「自由な意思決定に制限を加え、正常な判断が妨げられる状態で、献金や物品の購入をさせ、多額の損害を被らせ、親族を含めた多くの人々の生活の平穏を害する行為を行った」などと述べた。
具体的には、旧統一協会側の損害賠償責任を認めた民事訴訟の判決が、文化庁が把握する限りで32件あり、1審までの被害者総数は169人、認められた被害総額は約22億円で、1人当たり平均約1320万円に上ることを挙げた。また、訴訟上の和解や訴訟外の示談を加えると、被害者総数は約1550人に上り、解決金などの総額は約204億円、1人当たり平均約1310万円に上るという。
盛山氏はさらに、財産的損害に加え精神的損害も甚大なものであったと指摘。その上で、旧統一協会側の行為は民法上の不法行為に該当し、その被害が甚大であることを踏まえれば、解散命令の理由となる「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」(宗教法人法第81条1項1号)に該当するとした。また、旧統一協会の行為は財産的利得を目的としたものになっていたとし、同じく解散命令の理由となる「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」(同2号)にも該当するとした。
会見はこの日、宗教法人審議会が開かれた直後に行われた。同審議会は、宗教者や大学教授ら19人の委員で構成される文科相の諮問機関。解散命令の請求については、同審議会に諮問する法的必要はないが、今回は諮問を実施。全会一致で解散命令の請求を「相当」と答申したという。なお、委員名簿によると、キリスト教からは日本基督教団の網中彰子総幹事、日本同盟基督教団の廣瀬薫前理事長らが委員として参加している。
解散命令の請求後は、東京地裁が非公開で審理を行う。地裁の決定に不服がある場合は、文科省、旧統一協会双方が高裁や最高裁に訴えることができる。請求が認められ、解散命令が出されると、宗教法人格が剥奪され、税制上の優遇を受けられなくなる。ただし、その後も任意の宗教団体としては活動を継続することができる。過去には、地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教と、「足裏診断」と称する個人面談で多額の金銭をだまし取り教団トップらが逮捕された明覚寺の2つの宗教法人が解散命令を受けている。
文科省の決定に対し、旧統一協会は同日、「極めて残念であり、遺憾」とするコメントを発表。2009年のコンプライアンス宣言以降は積極的に改革に取り組んできたなどと述べ、今後は裁判において法的な主張を行っていく考えを示した。
■ 盛山正仁文部科学相の臨時記者会見