コンゴ民主共和国(旧ザイール)東部の北キブ州にあるプロテスタント教会で、斬首されたキリスト教徒70人の遺体が発見された。被害者らは数日前に、イスラム反政府勢力「民主同盟軍」(ADF)の武装集団に拉致されていた。
国際迫害監視団体「オープンドアーズ」(英語)によると、武装集団は2月13日午前4時ごろ、同州ルベロ地区マイバに到着し、住民に立ち退くよう命じた。その際、キリスト教徒の男女少なくとも20人を連れ去った。その後、住民たちが救出計画のために集まったが、武装集団は村を包囲し、さらに50人を拉致したという。
連れ去られた住民らは、同地区カサンガのプロテスタント教会に連れて行かれ、そこで斬首された。家族は、絶え間なく続く治安上の脅威のため、すぐに埋葬することができなかったという。
米国に拠点を置く迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC)は、今回の襲撃を「残忍な虐殺」と呼び、非難した。ICCのジェフ・キング会長は、米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」(英語)に対し、次のように述べた。
「キリスト教徒70人が命を落とした今回の虐殺は、単発の事件ではなく、20年以上にわたり600万人以上の命を奪ってきたこの国の断続的な戦争、その悲惨な暴力の連鎖の一部なのです」
「コンゴの住民の大半はキリスト教徒ですから、これはイスラム過激派による宗教的な虐殺です。今や、祈り以上の行動を起こすべき時です。この破綻した国家に介入し、秩序を回復し、終わりのない流血の連鎖から人々を救うべく、全アフリカによる軍事的介入を要求しなければなりません」
オープンドアーズが、地元小学校の校長の話として伝えたところによると、現地では、地域の教会や保健センターは、広範囲にわたる暴力のため活動を停止し、移転を余儀なくされている。また、多くのキリスト教徒が安全を求め、ルベロ地区から避難したという。地元教会の長老は、次のように語った。
「私たちは何をすべきか、どのように祈るべきか分かりません。虐殺はもうたくさんです。ただただ神の御心がなされますように」
ADFは過激派組織「イスラム国」(IS)と関連があるとされ、ここ数年、コンゴ北東部で攻撃を激化させている。2014年には北キブ州ベニで攻撃をエスカレートさせ、その後、同州の北に隣接するイトゥリ州のイルムとマンバサに勢力を拡大した。地元のニュースによると、1月にはルベロ地区のバスワガ首長区で200人以上を殺害した。
オープンドアーズが、キリスト教徒に対する迫害がひどい50カ国をまとめ、毎年発表している「ワールド・ウォッチ・リスト」(25年版、英語)で、コンゴは前年より6つ順位を上げ、世界で35番目に迫害が激しい国とされている。キリスト教信仰のために、殺害された人は355人(前年は261人)に上り、国内避難民となった人は約1万人(前年は約千人)に上る。被害を受けた地域では、家屋は略奪され、教会は閉鎖され、村を放棄せざるを得ない状況にある。
さらに混乱の中、隣国ルワンダが支援しているとされる反政府武装組織「3月23日運動」(M23)の存在が、治安の悪化に拍車をかけている。コンゴ側は、鉱物資源が豊富な領土の一部併合を期待してM23を支援していると、ルワンダ側を非難。一方、ルワンダ側は、コンゴ側が自国領土内で反政府武装勢力を支援し、1994年のルワンダ大虐殺の実行犯をかくまっているとして非難している。
非難の応酬が続く中、M23は最近、コンゴ東部の主要都市である北キブ州の州都ゴマを掌握したと宣言した。混乱の中、地元のキリスト教指導者らは、隣人同士の平和と調和に向けて取り組む決意を示している。
他方、オープンドアーズのサブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)地域の法務担当者であるジョン・サミュエル氏(安全上の理由で仮名)は、これらの暴力は「ほとんど誰にも責任を問えない『免罪の文脈』の中で起こっている」と指摘する。その上でサミュエル氏は、世界のキリスト教コミュニティーに対し、コンゴ東部のキリスト教徒と脆弱(ぜいじゃく)なコミュニティーのために祈り続け、政府による公平かつ透明性のある取り組みを訴え、暴力の終結を求めるよう促している。
米国務省は「信教の自由に関する国際報告書」(23年版、英語)で、「現地でADFとして知られる指定テロ組織『コンゴ民主共和国のイスラム国』(ISIS-DRC)が、北キブ州とイトゥリ州において、教会や宗教指導者を標的にするなど無差別に市民を攻撃し続けている。この暴力はあらゆるコミュニティーを標的にしているが、犠牲の大半は宗教的多数派のキリスト教徒だ」と指摘している。
コンゴには、約700万人の国内避難民がいると推定されている。キリスト教国際NGO「ワールド・ビジョン」は、避難民となった子どもたちを支援するために、国際社会がより一層の努力を行うよう呼びかけている。