ナイジェリアで2019年10月から23年9月までの4年間に、過激派などにより1万7千人近いキリスト教徒が殺害されたことが、大規模調査で明らかになった。
アフリカ宗教自由監視団(ORFA)が8月29日に発表した報告書(英語)によると、このうち55%は武装したフラニ族の手によるものだった。フラニ族は、ナイジェリアを含め西アフリカ諸国に分布するイスラム教徒が主体の遊牧民。また、29%はその他のテログループ、8%はイスラム過激派として知られる「ボコ・ハラム」と「イスラム国西アフリカ州」(ISWAP)に殺害された。
ORFAは、「イスラム過激派は、ナイジェリアの広い地域で市民に対する残虐行為を繰り返す自由を享受している」と指摘する。
報告書はこの4年間に、死者が出た襲撃事件だけで9970件あり、5万5910人が殺害されたとしている。このうち3万880人が民間人で、2万5030人は治安部隊かテログループのメンバー。また、キリスト教徒の死者数(1万6769人)は、イスラム教徒の死者数(6235人)の2・5倍を超えた。
「襲撃が発生した州では、キリスト教共同体の犠牲が群を抜いて大きい。これらの州の人口で計算すると、イスラム教徒の6・5倍のキリスト教徒が殺害されている」とORFAは指摘する。
フラニ族による暴力の多くは、ナイジェリアの「北中部」地域と、「北西部」地域に含まれるカドゥナ州の南部に集中している。しかし、「襲撃現場における治安維持活動は著しく少ない」という。
ORFAのシニアアナリストであるフランス・ビエルハウト氏は、「何百万人もの人々が無防備のまま放置されています」と話す。「何年もの間、テロリストが脆弱(ぜいじゃく)な共同体を襲撃しているにもかかわらず、助けを求める声が無視されているという話を耳にしてきました。このデータはそれを物語っています」
殺害に加え、誘拐も多発しており、4年間で2万1621人が誘拐された。誘拐の被害者もキリスト教徒の方が多く、イスラム教徒の1・4倍となっている。
ORFAの現地協力者でアナリストのギデオン・パラマラム牧師は、武装したフラニ族はキリスト教徒を狙っているが、イスラム教徒も「彼らの手によって深刻な被害を受けています」と言う。
また、「誘拐犯はイスラム主義を掲げて活動しています。若い女性が誘拐され、拷問され、性的暴力を受けている地域では、普通の結婚生活をしたり、家族を持ったりする希望は消えてしまうかもしれません」と話した。
報告書によると、こうした大規模な暴力により、330万人ものナイジェリア人が家を追われ、その場しのぎの避難生活を余儀なくされている。
ORFAは国際社会に対し、今回の調査結果に目を向け、「ナイジェリアが直面する問題の大きさを十分理解するよう努めてほしい」と呼びかけている。