それでは、長く長く引っ張りましたが、私なりに本コラムの主題である「神(GOD)」の定義をさせていただきたいと思います。幾つかありますので、箇条書きにしてみます。
1. 宇宙万物(私とあなたを含む)を造った方
2. 人格・ペルソナ(知性・感情・意思)を持った方
3. 最初から自ら存在している方
4. 唯一なる方
これらは、これまでに説明してきたものをまとめたものです。英語のGOD(もしくはGod)というのは、上記の定義にあてはまるような存在となります。対して多神教の神々などは、英語の小文字でgodと表記され、区別されます。
日本語ではそれを区別せずに両方とも「神」としています。さらには、ちょっとすごい人に対しても「あの人、神だ!!」と言ったり、「神風」「神技」「神セブン」などと多用されたりしていますから、今後はそれらと少し分けて考えることを意識してください。ではこのGODを日本語でどう表記すれば、より正確を期すことができるでしょうか。残念ながら一語で表記するのは無理なのですが、1から4までの特徴を強調する場合にはそれぞれ、1「創造主」、2「人格神」、3「自存者」、4「唯一神」とすればより分かりやすくなるでしょう。
前置きはここまでにして、神の定義の詳細に関してですが、ここでは分かりやすくするために、あえて善なる方とか愛の神様とかいう項目をその定義から外しました。誤解のないように言っておくと、もちろん私は個人的には神が善であり、私とあなたを無条件に愛してくださる方だということを信じているのですが、それは必ずしも神を定義するときに必要ではないのです。
戦争などの悲劇に関して
よくこのようなことを言う方々がいらっしゃいます。「もしも善なる神がいるとすれば、なぜこの世の中に戦争や多くの悲劇があるのか? 結局『神』なんていないのだ」
飢餓や少年兵などに象徴される悲しみの多い世相を見るときに、十分理解できる言葉です。神様の存在を信じている私ですら、「神様、なぜ世の中にはこんなにも悲しみやイタミが多いのですか」と涙ながらに祈らざるを得ない状況が多々あります。しかし、少し冷静に考えてみると、これは行き場のない(尊重されるべき)悲しみの感情の吐露であり、ロジカルな正しい帰結とは言えないことが分かります。
分かりやすくするためにこう言い換えてみましょう。「うちの父は暴力をふるうし、アル中だし、仕事もしない最悪な奴だ!!だから彼は私の父ではないのだ!!」
どうでしょうか? 気持ちは十分理解できますが、「最悪な奴」という論拠をもとに「私の父ではない」と結論づけることは、ロジックとして全くかみ合っていません。同様に、善なる神でなければ(もしくは世界に戦争があるので)、神は存在しないというのも大きな論理の飛躍です。むしろ僕は、上述のような固定概念を崩すために、あえてこのように説明します。
「神がいかに悪魔的であろうとも、私たちの窮地を救うどころか、私たちを窮地に陥れ、遊び半分に私たちを殺すような存在だとしても、それをもってして神の存在を否定することはできませんよ」
でもこう言うと、「そんな神ならいないほうがましだ、僕は戦争ひとつ止められない神を信じてなんかやらない」と言う方々も多くいます。
もう一度ロジカルに考える必要があるのですが、神が存在するならば神は当然人類以上に偉大な存在ですし、私たちが生まれる前から存在している方ですので、誰かが「いないほうがましだ」と言ったところで、存在しないことになるわけはありませんし、「信じてやる」から存在するわけでもありません。
とは言え、このような感情が働くのもやむを得ない面があります。『利己的な遺伝子』などで高名な進化生物学者であるリチャード・ドーキンスが、神の存在を真っ向から否定していますが、宗教戦争的風潮のあったNYの9・11テロ及びそれに次ぐ戦争などの惨劇を見るに及んで、「やはり神の存在は否定されるべきだ」との想いを強くしたと語っているほどですから。
その心情は痛いほど分かります。しかしやはり、人間の感情や悲劇の問題と神の存在の有無に関しては何の論的つながりもありません。また戦争や飢えなどのこの世の悲しみの大部分は人災であり、神の責任であるというよりは、私たち人類の内にある利己心、貪欲、怒り、他者への無関心などが主因であることも忘れてはなりません。むしろ聖書の神は人類が、互いに争わず、弱者と富を分け合うことを度々勧めています。
そう言われてもまだ感情的に納得できない方もいるかもしれません。そう、それは感情的な問題なのですが、人間には感情があるのでそれも無視はできません。後日いかに神が善なる方であり、あなたを愛している方かについても力説したいと思います。神は全ての人に都合のよい御利益(ごりやく)を与える方ではないかもしれませんが、あなたを愛してやまない方なのです。
とにかくまずは、神が存在することを理解しやすいように、神の定義をシンプル化させていただきました。さらにシンプルに一言で言うと、「神とは人間以上の存在である」と定義しても良いかもしれません。なぜなるべくシンプルに神を定義する必要があるのかは、次回にまた書かせていただきたいと思います。
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山崎純二(やまざき・じゅんじ)
1978年横浜生まれ。東洋大学経済学部卒業、カナタ韓国語学院中級修了、成均館大学語学堂(ソウル)上級修了、JTJ宣教神学校卒業、ブルーデーター(NY)修了、Nyack collage-ATS M.div(NY)休学中。韓国においては、エッセイコンテスト「ソウルの話」が入選し、イ・ミョンバク元大統領(当時ソウル市長)により表彰される。アメリカでは、クイーンズ栄光教会に伝道師として従事。その他、自身のブログや書籍、各種メディアを通して不動産関連情報、韓国語関連情報、キリスト教関連情報を提供。著作『二十代、派遣社員、マイホーム4件買いました』(パル出版)、『ルツ記 聖書の中のシンデレラストーリー(Kindle版)』(トライリンガル出版)他。本名、山崎順。