旧約聖書に見る本来の労働の姿として、ダビデの神殿建設の準備を取り上げる。
神殿建設そのものは、ダビデの子ソロモンによってなされたが、その成功を支えたのは、神殿建設に対する父ダビデの見事な準備作業(労働)であった。ダビデの準備作業(労働)がどのように神に導かれて行われたか、御言葉から見て行きたい。
まずダビデは、神殿のすべてのものの仕様書を、聖霊の導きによって作成した。御言葉に「御霊により彼が示されていたすべてのものの仕様書であった。すなわち、主の宮の庭のこと、回りにあるすべての脇部屋のこと、神の宮の宝物倉のこと、聖なるささげ物の宝物倉のこと、祭司とレビ人の組分けのこと、主の宮の奉仕のすべての仕事のこと、主の宮の奉仕に用いるすべての器具のことである」(Ⅰ歴代誌28:12、13)とある通りである。
次にダビデはソロモンに、神があなたと共におられ、すべての仕事を完成させて下さるから、恐れずに事を成し遂げなさいと励ましている。
「それから、ダビデはその子ソロモンに言った。『強く、雄々しく、事を成し遂げなさい。恐れてはならない。おののいてはならない。神である主、私の神が、あなたとともにおられるのだから――。主は、あなたを見放さず、あなたを見捨てず、主の宮の奉仕のすべての仕事を完成させてくださる。見なさい。神の宮のあらゆる奉仕のために祭司とレビ人の各組がいる。あらゆる奉仕のために知恵のある、進んで事に当たるすべての人が、どんな仕事にも、あなたとともにいる。つかさたちとすべての民は、あなたのすべての命令に従う』」(Ⅰ歴代誌28:20、21)
またダビデは神殿建設のために必要な多くの資材類を用意した。彼は人間を整えて奉仕の働きに導いただけでなく、神殿建設に必要な物資をも全力を尽くして用意した。ここにダビデの神に対する、また作業(労働)に対する誠実さを見ることができる。
「私は全力を尽くして、私の神の宮のために用意をした。すなわち、金製品のための金、銀製品のための銀、青銅製品のための青銅、鉄製品のための鉄、木製品のための木、しまめのう、色とりどりのモルタルの石の象眼細工、あらゆる宝石、大理石をおびただしく用意した。そのうえ、私は、私の神の宮を喜ぶあまり、聖なる宮のために私が用意したすべてのものに加えて、私の宝としていた金銀を、私の神の宮のためにささげた」(Ⅰ歴代誌29:2、3)
さらに、ダビデは全集団の目の前で主をほめたたえ、全てはあなたから出たものです、とへりくだって、主に感謝の念を表している。
「ダビデは全集団の目の前で主をほめたたえた。ダビデは言った。『私たちの父イスラエルの神、主よ。あなたはとこしえからとこしえまで、ほむべきかな。主よ。偉大さと力と栄えと栄光と尊厳とはあなたのものです。天にあるもの地にあるものはみなそうです。主よ。王国もあなたのものです。あなたはすべてのものの上に、かしらとしてあがむべき方です。富と誉れは御前から出ます。あなたはすべてのものの支配者であられ、御手には勢いと力があり、あなたの御手によって、すべてが偉大にされ、力づけられるのです。今、私たちの神、私たちはあなたに感謝し、あなたの栄えに満ちた御名をほめたたえます。まことに、私は何者なのでしょう。私の民は何者なのでしょう。このようにみずから進んでささげる力を保っていたとしても。すべてはあなたから出たのであり、私たちは、御手から出たものをあなたにささげたにすぎません』」(Ⅰ歴代誌29:10~14)
このようにダビデの準備作業(労働)は、全て徹底的に神との交わりを通して行われたことが分かる。それゆえにダビデの準備作業(労働)を神は祝福され、ソロモンの神殿建設を成功裡に導かれた。
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門谷晥一(かどたに・かんいち)
1943年生まれ。東京大学工学部大学院修士課程卒業。米国ミネソタ州立大学工学部大学院にてPh.D.(工学博士)取得。小松製作所研究本部首席技監(役員待遇理事)などを歴任。2006年、関西聖書学院本科卒業。神奈川県厚木市にて妻と共に自宅にて教会の開拓開始。アガペコミュニティーチャーチ牧師。著書に『ビジネスマンから牧師への祝福された道―今、見えてきた大切なこと―』(イーグレープ)。