新約聖書に見る本来の労働の姿として、ペテロたちの漁を取り上げる。ペテロたちの漁についての聖書の御言葉ほど、本来の労働の姿を明快かつ鮮やかに表している箇所は他にない。ヨハネの福音書21章1節~3節に「この後、イエスはテベリヤの湖畔で、もう一度ご自分を弟子たちに現された。その現された次第はこうであった。シモン・ペテロ、デドモと呼ばれるトマス、ガリラヤのカナのナタナエル、ゼベダイの子たち、ほかにふたりの弟子がいっしょにいた。シモン・ペテロが彼らに言った。『私は漁に行く。』彼らは言った。『私たちもいっしょに行きましょう。』彼らは出かけて、小舟に乗り込んだ。しかし、その夜は何もとれなかった」とある。これより、ペテロたちは夜通し漁をしたが、何も取れなかったことが分かる。このように、人間の力によって行う労働は、時として何の成果をももたらさないことがある。即ち非常に低い生産性、低い効率の労働に終わる。
しかし、彼らがイエスの言われたことに従い、その通りに行った時、彼らの網には大量の魚がとれた。「イエスは彼らに言われた。『舟の右側に網をおろしなさい。そうすれば、とれます。』そこで、彼らは網をおろした。すると、おびただしい魚のために、網を引き上げることができなかった。そこで、イエスの愛されたあの弟子がペテロに言った。『主です。』すると、シモン・ペテロは、主であると聞いて、裸だったので、上着をまとって、湖に飛び込んだ」(ヨハネ21:6、7)。彼らは、指示を与えられたのがイエスだとは知らずにその通りに行った。その結果、想像を超える大いなる成果をあげることができ、それは彼らを驚かせるに充分であった。
このペテロたちの漁から、大いなる成果の源はただイエスにあり、人間にはないこと、また神のみが溢れるほどの豊かな成果を与えることができることを知ることができる。人間の力だけであげうる成果は、たとえそれが人の目には大きいように見えたとしても、それは一般恩恵の枠内に留まる成果でしかないことを覚えたい。
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門谷晥一(かどたに・かんいち)
1943年生まれ。東京大学工学部大学院修士課程卒業。米国ミネソタ州立大学工学部大学院にてPh.D.(工学博士)取得。小松製作所研究本部首席技監(役員待遇理事)などを歴任。2006年、関西聖書学院本科卒業。神奈川県厚木市にて妻と共に自宅にて教会の開拓開始。アガペコミュニティーチャーチ牧師。著書に『ビジネスマンから牧師への祝福された道―今、見えてきた大切なこと―』(イーグレープ)。