本来の労働は神の大いなる祝福を受け、大きな恵みをもたらすものである。その例は聖書の中に多く記されている。大原則は、人為的なものに頼らず神に頼る時に、人々も国も大いなる全的祝福を受けるということである。それがどんなに素晴らしいものであるかを、いくつかの御言葉から見ていきたい。
(1)平安と喜びが与えられる[4]。幸福でしあわせになる、「幸いなことよ。すべて主を恐れ、主の道を歩む者は。あなたは、自分の手の勤労の実を食べるとき、幸福で、しあわせであろう」(詩篇128:1~2)、「なぜなら、神は、みこころにかなう人には、知恵と知識と喜びを与え、罪人には、神のみこころにかなう者に渡すために、集め、たくわえる仕事を与えられる。これもまた、むなしく、風を追うようなものだ」(伝道者2:26)。
(2)能力に応じて働き、必要に応じて受ける(無競争の状態)。エデンの園は、労働の所産によって生計を立てるところではなかった。生活の糧が充分あったということは、労働がそのためのものではなく、むしろそれによって人間が神の創造の目的を遂行、成就する方法とみなされる。その点で、エデンの園の構造は、労働と報酬との非連続性を示している。罪の無いエデンにおける神の直接支配の世界構造の中では「能力に応じて働き、必要に応じて受ける」という原則が見られる。報酬が労働の原因や、目的となって、労働の前後を報酬が取りまく世界は、堕罪後の世界である。それだけ、エデンの園の労働は祝福を受け、純粋な奉仕となっていた。これは、神の祝福の原理に沿った労働であり、原則的には堕罪後においても見られる。その例が出エジプト記の御言葉に示されている、「しかし、彼らがオメルでそれを計ってみると、多く集めた者も余ることはなく、少なく集めた者も足りないことはなかった。各自は自分の食べる分だけ集めたのである」(出エジプト記16:18)[6]。
(3)むだに労することがない。「彼らはむだに労することもなく、子を産んで、突然その子が死ぬこともない。彼らは主に祝福された者のすえであり、その子孫たちは彼らとともにいるからだ」(イザヤ65:23)
(4)必ず与えられる、また満ち足りるまで与えられる。「雨や雪が天から降ってもとに戻らず、必ず地を潤し、それに物を生えさせ、芽を出させ、種蒔く者には種を与え、食べる者にはパンを与える」(イザヤ55:10)、「もし、あなたがたがわたしのおきてに従って歩み、わたしの命令を守り、それらを行なうなら、わたしはその季節にしたがってあなたがたに雨を与え、地は産物を出し、畑の木々はその実を結び、あなたがたの麦打ちは、ぶどうの取り入れ時まで続き、ぶどうの取り入れ時は、種蒔きの時まで続く。あなたがたは満ち足りるまでパンを食べ、安らかにあなたがたの地に住む。わたしはまたその地に平和を与える。あなたがたはだれにも悩まされずに寝る。わたしはまた悪い獣をその国から除く。剣があなたがたの国を通り過ぎることはない」(レビ26:3~6)、「柔和な者は幸いです。その人は地を相続するからです。義に飢え渇いている者は幸いです。その人は満ち足りるからです」(マタイ5:5~6)。
(5)やむことなく与えられる。「地の続くかぎり、種蒔きと刈り入れ、寒さと暑さ、夏と冬、昼と夜とは、やむことはない」(創世記8:22)
(6)すべてのものが与えられる。「それで、神はノアと、その息子たちを祝福して、彼らに仰せられた。『生めよ。ふえよ。地に満ちよ。野の獣、空の鳥、―地の上を動くすべてのもの―それに海の魚、これらすべてはあなたがたを恐れておののこう。わたしはこれらをあなたがたにゆだねている。生きて動いているものはみな、あなたがたの食物である。緑の草と同じように、すべてのものをあなたがたに与えた』」(創世記9:1~3)、その他、マタイ6:33。
(7)良きものが与えられる。「もし喜んで聞こうとするなら、あなたがたは、この国の良い物を食べることができる」(イザヤ1:19)
(8)非常に高い生産性・高い効率が見られる。「イサクはその地に種を蒔き、その年に百倍の収穫を見た。主が彼を祝福してくださったのである。こうして、この人は富み、ますます栄えて、非常に裕福になった。」(創世記26:12~13)
(9)繁栄し、また栄える。「この律法の書を、あなたの口から離さず、昼も夜もそれを口ずさまなければならない。そのうちにしるされているすべてのことを守り行なうためである。そうすれば、あなたのすることで繁栄しまた栄えることができるからである」(ヨシュア記1:8)、その他、申命記28:1~14、詩篇35:27。
(10)神に似る者となっていく。人は労働によって神の世界管理のわざに加わり、神のかたちを具体化していく。人はその仕事を通じて自分の人格を具体的に形づくっていく[5]。
(11)創造的になり、高い創造性(力)が与えられる。
参考文献
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[48] 「フィジーのリバイバルを収録」(『リバイバル新聞』2005年)、及びDVDビデオ「海は鳴りとどろけ」(2005年、プレイズ出版)
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門谷晥一(かどたに・かんいち)
1943年生まれ。東京大学工学部大学院修士課程卒業。米国ミネソタ州立大学工学部大学院にてPh.D.(工学博士)取得。小松製作所研究本部首席技監(役員待遇理事)などを歴任。2006年、関西聖書学院本科卒業。神奈川県厚木市にて妻と共に自宅にて教会の開拓開始。アガペコミュニティーチャーチ牧師。著書に『ビジネスマンから牧師への祝福された道―今、見えてきた大切なこと―』(イーグレープ)。