パウロは、労働をどのような態度で、またどのように行うかということに関し、多くの御言葉をもって自ら模範を示して教えている[14]。それらの中から6つの御言葉を以下に見ていきたい。
「また、私たちが命じたように、落ち着いた生活をすることを志し、自分の仕事に身を入れ、自分の手で働きなさい。外の人々に対してもりっぱにふるまうことができ、また乏しいことがないようにするためです」(Ⅰテサロニケ4:11~12)
「盗みをしている者は、もう盗んではいけません。かえって、困っている人に施しをするため、自分の手をもって正しい仕事をし、ほねおって働きなさい」(エペソ4:28)
「人のパンをただで食べることもしませんでした。かえって、あなたがたのだれにも負担をかけまいとして、昼も夜も労苦しながら働き続けました。それは、私たちに権利がなかったからではなく、ただ私たちを見ならうようにと、身をもってあなたがたに模範を示すためでした。私たちは、あなたがたのところにいたときにも、働きたくない者は食べるなと命じました。ところが、あなたがたの中には、何も仕事をせず、おせっかいばかりして、締まりのない歩み方をしている人たちがあると聞いています。こういう人たちには、主イエス・キリストによって、命じ、また勧めます。静かに仕事をし、自分で得たパンを食べなさい」(Ⅱテサロニケ3:8~12)
「奴隷たちよ。あなたがたは、キリストに従うように、恐れおののいて真心から地上の主人に従いなさい。人のごきげんとりのような、うわべだけの仕え方でなく、キリストのしもべとして、心から神のみこころを行ない、人にではなく、主に仕えるように、善意をもって仕えなさい。良いことを行なえば、奴隷であっても自由人であっても、それぞれその報いを主から受けることをあなたがたは知っています」(エペソ6:5~8)
「奴隷たちよ。すべてのことについて、地上の主人に従いなさい。人のごきげんとりのような、うわべだけの仕え方ではなく、主を恐れかしこみつつ、真心から従いなさい。何をするにも、人に対してではなく、主に対してするように、心からしなさい。あなたがたは、主から報いとして、御国を相続させていただくことを知っています。あなたがたは主キリストに仕えているのです」(コロサイ3:22~24)
「兄弟たち。あなたがたは、私たちの労苦と苦闘を覚えているでしょう。私たちはあなたがたのだれにも負担をかけまいとして、昼も夜も働きながら、神の福音をあなたがたに宣べ伝えました」(Ⅰテサロニケ2:9)
以上の6つの御言葉から教えられる、労働に対する5つの正しい姿勢を以下に示す[4] [15]。
(1)自分の仕事を、自分の手で、身をいれ、ほねおって、労苦して行うこと
(2)正しく、静かに働くこと
(3)外の人々に対してもりっぱにふるまえるよう、また他の人に模範を示すことができるように働くこと
(4)真心から地上の主人に従って、主に仕えるように善意をもって仕えて働くこと
(5)キリストのしもべとして、心から神のみこころを行うように働くこと
労働をどのような態度でどのような姿勢で行うべきかについては、その他の御言葉にも示唆が与えられている。それらを以下に示す。
(6)喜んで行う。「見よ。私がよいと見たこと、好ましいことは、神がその人に許されるいのちの日数の間、日の下で骨折るすべての労苦のうちに、しあわせを見つけて、食べたり飲んだりすることだ。これが人の受ける分なのだ。実に神はすべての人間に富と財宝を与え、これを楽しむことを許し、自分の受ける分を受け、自分の労苦を喜ぶようにされた。これこそが神の賜物である」(伝道者の書5:18~19)。その他、詩篇90:17。
(7)神に従い、神を信頼して、御言葉により頼んで行う。ノアは神に従い、神を信頼して箱舟造りを行った。「ノアは、すべて神が命じられたとおりにし、そのように行なった」(創世記6:22)。
(8)神を第一とし、神の視点から始める[2]。神の国とその義とを先ず第一に求める。「そういうわけだから、何を食べるか、何を飲むか、何を着るか、などと言って心配するのはやめなさい。こういうものはみな、異邦人が切に求めているものなのです。しかし、あなたがたの天の父は、それがみなあなたがたに必要であることを知っておられます。だから、神の国とその義とをまず第一に求めなさい。そうすれば、それに加えて、これらのものはすべて与えられます」(マタイ6:31~33)。「幸いなことよ。悪者のはかりごとに歩まず、罪人の道に立たず、あざける者の座に着かなかった、その人。まことに、その人は主のおしえを喜びとし、昼も夜もそのおしえを口ずさむ。その人は、水路のそばに植わった木のようだ。時が来ると実がなり、その葉は枯れない。その人は、何をしても栄える」(詩篇1:1~3)。
(9)聖霊により頼んで行う。神の方法は死んでいた人間の霊を聖霊によって生かし霊との相互作用の中で魂を整える。魂が主導権を握るのではなく、むしろ霊が魂を用いるのである[16]。「勤勉で怠らず、霊に燃え、主に仕えなさい」(ローマ12:11)。
(10)労働から得られるものは全て神のものであり、得たものを一旦神にお返しして神から受け取るという思いで行う。「あなたの財産とすべての収穫の初物で、主をあがめよ。そうすれば、あなたの倉は豊かに満たされ、あなたの酒ぶねは、新しいぶどう酒であふれる」(箴言3:9~10)。「十分の一をことごとく、宝物倉に携えて来て、わたしの家の食物とせよ。こうしてわたしをためしてみよ。―万軍の主は仰せられる。―わたしがあなたがたのために、天の窓を開き、あふれるばかりの祝福をあなたがたに注ぐかどうかをためしてみよ。わたしはあなたがたのために、いなごをしかって、あなたがたの土地の産物を滅ぼさないようにし、畑のぶどうの木が不作とならないようにする。―万軍の主は仰せられる。―すべての国民は、あなたがたをしあわせ者と言うようになる。あなたがたが喜びの地となるからだ」(マラキ3:10~12)。
(11)人に仕え、人を活かし、上司・同僚・トップマネジメントたちに対する行き届いた配慮を持って行う。昔ダニエルは異教徒の王や上司、また同僚たちを愛し信頼して彼らに仕え、彼らとともに働き、彼らの愛と信頼をかち得て、ついに彼らが「ダニエルの神は、ほむべきかな」と告白するに至ったことはその良い模範である[10] 。
(12)誠実さを持って行う[11]。
(13)ビジョン、使命、知識と技能、継続した向上心を持って行う。
(14)労働の世界でキリスト者はみな、キリストの体の部分を構成している[4]との思いを持って行う。
(15)結果は主に委ねるという思いで行う。「あなたのしようとすることを主にゆだねよ。そうすれば、あなたの計画はゆるがない」(箴言16:3)。
(16)神の創造された世界が健全に成長するか、社会が健全に築き上げられ社会構成員の生活が物質的にも精神的にも豊かにされるか、労働する者自身の生活が満たされ彼の人格が健全に形成されるか等を考慮しつつ行う[10] 。
参考文献
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[47] 「キリスト教主義打ち出すクリスチャン企業」(『リバイバル新聞』2005年5月22日号)
[48] 「フィジーのリバイバルを収録」(『リバイバル新聞』2005年)、及びDVDビデオ「海は鳴りとどろけ」(2005年、プレイズ出版)
■ 働くことに喜びがありますか?: (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)
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門谷晥一(かどたに・かんいち)
1943年生まれ。東京大学工学部大学院修士課程卒業。米国ミネソタ州立大学工学部大学院にてPh.D.(工学博士)取得。小松製作所研究本部首席技監(役員待遇理事)などを歴任。2006年、関西聖書学院本科卒業。神奈川県厚木市にて妻と共に自宅にて教会の開拓開始。アガペコミュニティーチャーチ牧師。著書に『ビジネスマンから牧師への祝福された道―今、見えてきた大切なこと―』(イーグレープ)。