1993年から、日本、韓国、台湾の持ち回りで開かれてきた「アジアキリスト教病院協会」(ACHA)の第24回年次総会(第16回までは日韓台キリスト教病院最高経営者会議として開催)が、11月14日から16日までの3日間、タイの首都バンコクで開催された。タイでの開催は今回が初めてで、今年創立70周年を迎えたバンコクキリスト教病院がホストとなった。日本、韓国、台湾に加えてシンガポールからも参加者があり、総勢191人(日本28人、韓国29人、台湾34人、シンガポール5人、タイ95人)の医療関係者が集った。日本からは、淀川キリスト教病院(大阪)、オリブ山病院(沖縄)、衣笠病院(神奈川)、山本内科医院(山形)から代表者が参加した。そのレポートを4回にわけてお伝えする。
今総会の主題は「変革:キリスト教病院へのチャレンジ」。2日目と3日目にはシンポジウムが開かれ、それぞれ「急変する世界におけるキリスト教病院」「将来のキリスト教病院のリーダーシップ」をテーマにした。
総会の主題と、シンポジウムのテーマから分かるように、今総会では、激変する現代社会にあって病院内外の状況も変化しているが、それに対してキリスト教主義をもってどう応えるかが全体として討議された。開会礼拝では、タイキリスト教大学のチャプレンであり医師のワチトラ・アクラフィチャヤトン牧師がメッセーを伝えた。
基調講演「キリスト教病院の変革」
その後行われた基調講演では、タイ最大規模の私立病院グループ「バンコク・ドゥシット医療サービス」(BDMS)の前理事、現副会長で医師でもあるチャトリー・ドゥアングネット氏が、「キリスト教病院の変革」をテーマに語った。
ドゥアングネット氏は講演で、①医療機関としての変革、②キリスト教病院として変革、③キリスト教病院へのチャレンジ、④ACHAへの提案とそれを成功に導くための鍵、の4つを語った。特にキリスト教病院としては、臨床的な基準や接遇的な基準だけでなく、伝道における基準が明確化されている必要があると指摘。そして、そこに立ちはだかる壁として、①台頭しつつある新しい世代、②サービスを受ける側の力の増大、③広範囲にわたる自動化、④これまでとは違う競争を挙げた。
確かに、これらは現代のどのような領域でも共通の課題であり、医療分野においても重視しなければならない課題である。そこでドゥアングネット氏は、ACHAが、①伝道の標準的ガイドラインの策定、②病院機能の標準化チームの形成、③その標準化プロセスの形成――を行うことが必要だと提案した。さらにこれらを成功に導くには、①協力関係、②リーダーシップの確立、③忍耐、④神ご自身に導きを得る――ということであった。この基調講演により、これまでACHAが抱えてきた諸課題が、この激変する時代にあぶり出されてきたように思われ、総会主題にふさわしく参加者全員へのチャレンジとなった。
歓迎晩餐会、船上から感じるタイ宣教の歴史
開会礼拝、基調講演の後、初日の晩には、会場のホテルに近い川沿いの広場で歓迎懇談会が行われた。そこでは、タイ料理とともに、タイの歌や踊りが披露され、心を込めて参加者を歓迎する素晴らしいひとときが用意されていた。各テーブルには、異なる国の参加者が座るよう配置され、他国からの参加者と自然に交流できるような配慮がなされていた。言葉の壁がありつつもよい交わりの時となった。
さらに歓迎懇談会の後には、広場近くの船着場からそのまま船でチャオプラヤー川を上り、川沿いの夜景を楽しんだ。船上からは、タイ宣教の歴史において重要な教会も見ることができた。一方、それとは対照的な黄金色に輝く大きな仏教寺院も目にし、100年以上の歴史があるタイのキリスト教宣教について覚えることができた。
キリスト教病院の「経営会議」から始まったACHA
昨年、韓国で開催された第23回総会のレポートでも紹介したが、アジアのキリスト教病院関係者が集うこの会議は、1993年に日韓台キリスト教病院最高経営者会議として、淀川キリスト教病院で、当時の同院院長であった白方誠彌(せいや)氏(現名誉院長)の指導の下で始まった。当時の日本では、欧米から派遣された宣教師の役割が変わり、医療宣教に対する支援も縮小される中で、それまで宣教師の派遣母体に支えられていたキリスト教病院の経営が問われていた。そこで最初は、各病院の経営者らによる「経営会議」として開催された。その後も、キリスト教理念を切り離すことなく、むしろ医療宣教に向けてどう経営を発展させていくかを話し合う場として続けられ、今に至っている。(続く)
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