東方正教会のコンスタンティノープル全地総主教バルソロメオス1世(85)が、宗教界のノーベル賞と呼ばれる「テンプルトン賞」の今年の受賞者に選ばれた。宗教や教派の違いを超えて、長年にわたり環境保護に取り組んできたことが評価された。同賞の公式サイト(英語)で10日、発表された。
バルソロメオス1世は「緑の総主教」の異名で知られ、宗教的責任としての環境保護を強調してきた。環境破壊を「罪」と見なし、科学者やジャーナリスト、活動家、神学者らが参加する国際会議を主導。環境の永続的な保護は根本的な価値観の変革なしには不可能だと訴えてきた。
テンプルトン賞の主催団体の一つであるジョン・テンプルトン財団のヘザー・テンプルトン・ディル会長は、「バルソロメオス1世がテンプルトン賞を受賞したのは、自身の精神的指導者としての役割において、環境保護を中心的な使命としてきたからです」と説明。「これは、この世界における人類の位置付けと目的に対する、私たちの集合的な理解を、科学の力を活用して深めるものです」と語った。
「バルソロメオス1世は、現代の世界において信心深くあることの意味について、キリスト教徒の考えを深めました。それは、私たちの周囲の人々や、私たちが暮らす自然界を含め、神の創造物のあらゆる側面を大切にすることを含むのです」
バルソロメオス1世は受賞インタビューの中で、「私たちはこの惑星の所有者ではありません」と強調。「この惑星は未来の世代のものでもあるのです。私たちは単に環境の管理者であり、祭司であり、所有者ではないのです」と語った。
「環境保護は、政治的な問題でも経済的な問題でもありません。それは主に、精神的、宗教的な問題です。なぜなら、神がそれを創造し、私たちに与えてくださったのは、それを守り、耕し、利用するためであって、乱用するためではないからです。これが環境保護の精神的な側面なのです」
バルソロメオス1世は1940年、トルコ西部のインブロス島(ギョクチェアダ島)で生まれた。69年に司祭に叙聖され、フィラデルフィア府主教、カルケドン府主教を経て、91年に第270代コンスタンティノープル総主教に選出された。コンスタンティノープル総主教は、各国・地域の独立正教会や自治正教会で構成され、世界に3億人の信者がいる東方正教会の精神的な最高指導者で、全治総主教とも呼ばれる。
テンプルトン賞は、世界で最も高額な賞金が贈られる世界最大級の年間個人賞の一つ。賞金は定期的に調整され、常にノーベル賞の賞金を上回る金額が贈られる。現在の賞金は110万ポンド(約2億円)。
世界的な投資家で篤志家、また長老派のキリスト教徒として知られるジョン・テンプルトン氏(1912~2008)が1972年に設立した。第1回の受賞者はマザー・テレサで、テゼ共同体の創始者であるブラザー・ロジェや大衆伝道者のビリー・グラハム氏、Cru(旧キャンパス・クルセード・フォー・クライスト=CCC)の創設者であるビル・ブライト氏など、キリスト教関係の受賞者も多い。日本人では、立正佼成会の開祖である庭野日敬(にっきょう)氏が受賞している。
宗教間の対話や交流に貢献した存命の宗教者や思想家、運動家などに贈られてきたことから、宗教界のノーベル賞と呼ばれてきた。現在は「科学の力を活用し、宇宙とその中における人類の位置付けと目的に関する最も深い問題の探求」に貢献した模範的な個人に贈られる賞とされ、科学者の受賞者も多い。