英国国教会(聖公会)の前カンタベリー大主教ローワン・ウィリアムズは、ロシアのウクライナ侵攻を非難しないことを理由に、世界教会協議会(WCC)がロシア正教会を除名することも正当化される可能性があることを示唆した。
ウィリアムズ氏は3日、英BBCラジオ4(英語)で、ロシア正教会の指導者らが「罪なき人々を戦争で虐殺することは、キリスト教のあらゆる教派において明確に非難されることである」と語るのを、依然として待っている状況だとコメント。ロシア正教会のトップであるモスクワ総主教キリルに対しては、「ウクライナであなたの群れが、あなたの群れの他のメンバーによって殺されているのです」と強い言葉で述べ、「自分の群れの殺害を非難するのはあなたの責任であり、あなたはイエス・キリストに対して彼らの責任を負っているのです」と伝えた。
一方、ロシア正教会には停戦を求める意志はあると指摘。それはウィリアムズ氏が望む「最低限」のことだとしつつも、ロシア正教会が「効果的で信頼できる停戦」を強く要求することは可能であり、それは対話を始める基礎になり得ると語った。
ウィリアムズ氏は自身の見方について、少なくとも幾つかの正教会からは支持を得られるのではないかとし、「正教会の中には、このこと(ロシア正教会がウクライナ侵攻を非難していないこと)によって(正教会の)正統性そのものが損なわれたと感じ、(ロシア正教会と)関係があることを恥ずかしく感じている人々が多くいることを知っていますので、他の正教会が言うことも注意深く聞きたいと思っています」と述べた。
一方、ロシア正教会でも、一部の司祭のグループが3月初め、即時停戦を求め、ロシア国内の平和的な反戦デモに対する弾圧を非難する声明を発表している。
ウィリアムズ氏はまた、ロシア正教会が加盟するWCCについても語り、除名の「強い根拠」があるとの考えを示した。
「教会が、侵略戦争を積極的に支持し、戦時中のあらゆる倫理上の行為における明白な違反を非難せずにいる場合、他の教会は問題を提起する権利があります。こうした兆候は見られており、除名の強い根拠があると思います」
実際に、ロシア正教会をWCCから除名するよう求める声もある。米首都ワシントンに拠点を置くディートリッヒ・ボンヘッファー研究所のロブ・シェンク所長は3月末、米宗教専門のRNS通信(英語)に掲載した寄稿で次のように述べている。
「ロシア軍がウクライナで行っている戦争犯罪を、キリル総主教が助長していることを考えると、WCCは道徳的勇気、倫理的責任、霊的誠実さを持って行動し、ロシア正教会のモスクワ総主教庁を除名しなければならない」