日本正教会の首座主教であるダニイル主代郁夫(ぬしろ・いくお)府主教は29日、ロシア正教会の首座主教であるキリル総主教に対し、ロシアとウクライナの一日も早い和解と紛争解決に尽力するよう求める嘆願書(27日付)をウェブサイトで公開した。
ダニイル府主教は懇願書で、「ロシア・ウクライナというわれわれの親愛なる兄弟間の武力衝突と凄惨な流血」に非常に心を痛めるとし、「大斎(おおものいみ)のこのとき、主の十字架上での受難を記憶し、真摯(しんし)なる痛悔と熱切なる主ハリストス(キリスト)、全能にして和平の神への嘆願をもって、一日も早い正教兄弟間の和解の実現を願って已(や)みません」と訴えた。
その上で、「何卒、至聖なる総主教聖下に於(お)かれましては、その霊的、教会的お力を最大限に発揮され、一日も早い兄弟間の和解と紛争解決にご尽力され、われわれ、日本の正教信徒に揺るぎない安心と将来への希望をお与え頂きますよう、聖自治日本正教会の主教品、全教役者、全信徒、およびすべての在日ロシア人・ウクライナ人信徒を代表して、衷心よりお願い申し上げます」と求めた。
日本正教会は10日にも、主教会議がロシアのウクライナ侵攻を念頭に、「あらゆる暴力行為と破壊に反対します」と表明し、「今般のウクライナにおける紛争の一日も早い終結を切願します」とする声明を発表していた。
また、15日には釧路ハリストス正教会のステファン内田圭一司祭が本紙に寄稿し、ロシアのウクライナ侵攻に抗議し、即時停戦を訴えるなどしていた。
歴史的にロシア正教会と関係の深い日本正教会は、ロシア正教会庇護下の自治教会。経済的に独立し、独自に教会運営を行うことが認められているものの、首座主教の選任などはロシア正教会の承認が必要とされている。