ロシア正教会の司祭らが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の即時停止と和解を求める公開書簡(ロシア語)を発表した。「われわれは、ウクライナの兄弟姉妹が不当に受けた試練を嘆く」。1日に発表された書簡にはそうつづられており、8日午前までに長司祭や司祭、輔祭ら286人が署名している。
書簡は、即時停戦と和解を求めつつ、「ロシアとウクライナ両国の兵士が、無傷で故郷と家族の元に戻れるように」と願いを表明。一方で、「ロシアとウクライナの子どもや孫たちが、再び友人となり、互いを尊重し、愛し合うようになるには、この溝を埋めなければならないと思うと悲しくなる」とつづっている。
ロシアでは福音派の牧師らも、軍事侵攻は「主権国家ウクライナへの侵略」だとし、反対する公開書簡(ロシア語)を発表している。書簡は現在非公開となっているが、400人以上が署名し、「いかなる政治的利益や目標も、罪のない人々の死を正当化することはできない」と訴え、次のように述べていた。
「われわれの軍隊は他国で本格的な軍事作戦を展開し、隣国ウクライナの都市に爆弾やロケット弾を投下している。信仰者として、われわれは今起こっていることを、兄弟殺しの重大な罪、つまり、兄弟であるアベルに手を上げたカインの罪だと認識している」
「流血に加え、主権国家ウクライナへの侵攻は、その国民の自己決定の自由を侵害するものである。われわれ国民の間に憎しみがまき散らされ、何世代にもわたって疎外と敵意の深淵を生み出すことになる。戦争はウクライナだけでなく、ロシアの国民、経済、道徳、未来を破壊しているのだ」
世界教会協議会(WCC)の暫定総幹事で、ルーマニア正教会の司祭でもあるイオアン・サウカ氏は、信者数が1億人を超えるとされるロシア正教会トップのモスクワ総主教キリルに、停戦のために声を上げるよう求める書簡(英語)を送っている。
サウカ氏は書簡で、「この絶望の時代に、多くの人が平和的解決に向けた希望の兆しをもたらすことができる人物として、あなたに注目しています。どうか声を上げて、苦しんでいる兄弟姉妹の代表として語ってください。そのほとんどが、私たち正教会の忠実な信者でもあるのです」と訴えている。
キリル総主教はロシアのウラジーミル・プーチン大統領と親しいとされている。ロイター通信(英語)によると、2012年には、プーチン氏による統治を「神の奇跡」と呼び、反対派を批判していたことがある。
侵攻が始まった2月24日に発表した談話(ロシア語)では、「心からの深い痛み」を表明。「紛争のすべての当事者に、民間人の死傷者を避けるために可能な限りのことをするよう呼び掛ける」とし、ロシア正教会の主教や司祭、信者らに、難民に対する支援を求めていた。しかし、ロシアとウクライナの歴史的な一体性に言及しつつ、停戦を直接呼び掛けることはしていない。