世界350以上の教団・教派が加盟する世界教会協議会(WCC)のイオアン・サウカ暫定総幹事は、戦火を交えるロシア、ウクライナ両国の大統領に宛てた書簡(23日付、英語)を発表した。書簡では、紛争の終結と平和的解決の合意は、ウラジミール・プーチン、ウォロディミル・ゼレンスキー両大統領の手に委ねられているとし、民間人の避難ルートである「人道回廊」の設置や即時停戦、すべての敵対行為の停止などを求めた。
ルーマニア正教会の司祭でもあるサウカ氏は冒頭、ゼレンスキー大統領のオレナ・ゼレンスカ夫人から書簡を受け取り、WCCが「今日の戦争に苦しむ人々の声」と「真の人道回廊の仲介者」になるよう懇願されたことに言及。オレナ夫人の言葉には、「子どもを失ったウクライナの母親たちや大切な人を失った家族の涙、爆撃によって廃墟となった家屋の下にいる人々や、安全な人道回廊がなく、脱水症状と飢餓で逃げ場のない人々の絶望」が込められていると伝えた。
その一方で、「私はまた、この非論理的な兄弟殺しの戦争から、愛する者を棺に迎えるロシアの母親たち、妻たち、子どもたち、また両親の痛みや苦しみも聞いています」とし、「どちらの側にも苦しみと絶望があり、誰もが紛争の終結を待ち望んでいるのです」と訴えた。
WCCはすでに、現在の戦争を批判する声明を発表しているが、「私たちはさらに別の声明を出すこともできますが、それが本当に助けになるとは思えませんでした」とサウカ氏。両大統領に対し、「紛争の終結と平和的解決の合意は、2人の手にのみ委ねられています。国民と歴史の前に、あなたがただけがその責任を負うことになるのです。外部の誰もが、この兄弟紛争を解決することも、解決策を押し付けることもできないのです」と訴えた。
サウカ氏は、ロシアとウクライナについて、「独立した国土を持つ2つの国家」であるとする一方、「姉妹国家であり、これからも姉妹国家であります。誰もその現実を否定したり、破壊したりすることはできません」と指摘。両国民がそれぞれ、両国に親類縁者を持つ関係であることを語った。また、サウカ氏自身が、スイスのエキュメニカル研究所で教鞭を執っていた際、両国の学生が自国に対する誇りを持ちながらも、日曜日には同じ正教会の教会に行き、共に祈っていたことを紹介。「彼らは互いにロシア人、ウクライナ人であることを誇らしく思いながらも、誰にも壊されない精神的な絆で結ばれていたのです」と伝えた。
その上で、WCCは両国の人々を必要としており、「人々が出会い、情報を共有し、たとえ意見が違っても互いに耳を傾ける、オープンで安全なプラットフォーム」であり続けるとし、「私たちは、平和、統一、和解をもたらす仲介者となるために最善を尽くしています」と伝えた。
最後には、両国民また加盟教団・教派を代表して、「どうか戦争を直ちにやめ、兵士たちに家族の元に戻るよう求め、すべての敵対行為を終わらせてください。あなたがたの国民に、信仰の伝統に従って死者を悼み葬る機会を与えてください。対話のテーブルに戻り、兄弟的議論を通じてあなたがた自身の問題を解決してください」と要求。両国にいる強硬派の存在にも理解を示しつつも、「兄弟愛がもたらす理解と歩み寄りなくして、永続的な平和は実現できません」と強調した。
サウカ氏はまた、オレナ夫人から、他の宗教指導者らと共にウクライナの首都キエフを訪問するよう招待されているとし、「それは私の夢であり、そのために祈っています」と伝えた。そして、復活大祭(イースター)に正教会で伝統的に歌われるという聖歌を紹介。そこには「私たちを憎む者たちをも『兄弟』と呼び、復活によってすべてを赦(ゆる)そう」という内容の歌詞があり、サウカ氏は「私は今年、キエフで皆さんと一緒に復活大祭を祝いたいと思います。互いに抱き合い、赦しを請い、支え合い、尊重し合う、長く続く平和を確認するために」と伝えた。