シリア紛争が始まってから15日で10年を迎えるに当たり、国際NGO「ワールド・ビジョン」は12日、10年間の紛争がシリアの経済成長と人的資産に与えた影響をまとめた報告書を発表した。紛争による経済的損失はこれまでに1・2兆ドル(約130兆円)を超えると推定され、紛争が直ちに終わった場合も、その影響は2035年までにわたり、現在の金額で1・7兆ドル(約185兆円)規模にまで蓄積され続けるという。また、10年にわたる紛争により、シリアの子どもたちの平均寿命は13年も短くなったとしている。
ワールド・ビジョンのアンドリュー・モーリー総裁は、「世界はこの紛争を10年間も放置してきました。子どもたちから基本的権利を奪い、子どもたちが神様から与えられた可能性を開花させて豊かないのちを生きていくことを妨げてきました」と指摘する。
報告書によると、武装勢力に徴用された子どものうち、15歳未満の子どもは25パーセントを占め、約82パーセントの子どもたちが直接戦闘に動員された。紛争が始まってから、推定5万5千人の子どもたちが殺害され、中には処刑や拷問によって命を落とす場合もあったという。また、シリア北西部で行った調査では、調査対象となったすべての少女がレイプや性的暴行の被害に遭うことを恐れながら生きていることが分かったという。
ワールド・ビジョンのシリア・レスポンス・ディレクターを務めるヨハン・ムージ氏は、「毎日子どもたちは、私たちのところに寒い中、空腹の状態でやってきます。子どもたちは、自分が目撃したことや経験したことでひどく苦しんでいます」と話す。ムージ氏によると、シリアでは5、6歳の子どもが、あらゆる爆弾の種類を音で識別できる一方、自分の名前を書くことすらできないことが珍しくないという。
モーリー氏は、「子どもたちは、愛する人を殺害され、学校を退学し、路上で物乞いをし、逃れた先でまた新たな暴力の脅威に直面しています」と言い、次のように訴えている。
「永続的な平和こそが今、シリアの子どもたちにとって唯一の実行可能な解決策です。国際社会は、これを実現するために全力を尽くすという道義的責任を負っています。経済的コストは壊滅的であり、子どもたちは代償を払い続けています。政治的意思、経済的支援、平和と安全に対する集団的で情熱的な取り組みが必要です。私たちは希望をもたらすために、今行動しなければなりません」