クリスチャン実業人の集い「日本CBMC」(青木仁志理事長)が主催する第19回国家朝餐祈祷会が12日、ヒルトン東京お台場で開かれた。平日の朝8時にもかかわらず、教団教派を超えて約520人が集まり、国の指導者と世界の平和のために祈りをささげた。自民党の石破茂衆院議員らクリスチャンの国会議員のほか、中東のイスラエルや南アジアのバングラデシュ、アフリカのナイジェリアなど、過去最多となる世界14カ国の駐日大使らが来賓として出席した。
国家朝餐祈祷会(NPB=National Prayer Breakfast)は、1953年に米国で始まった世界各国に広がる祈りの運動で、米国や韓国では毎年、現職の大統領が欠かさず出席することで知られている。日本ではこれまで「晩餐祈祷会」として行われてきたが、世界的な潮流に合わせて今回から「朝餐祈祷会」として新たなスタートを切った。
石破氏はあいさつで、自身が曽祖父の金森通倫(みちとも)から数えて4代目のクリスチャンであることを紹介し、「信仰を持つことのありがたさは、自分が罪人であるということを常に認識できること。神様にいかに自分が罪深い者であるかを心からお詫びすることができる、これが一番の幸せだと思っている」と話した。
安倍晋三首相のイラン訪問に言及しつつ、「世界の指導者と共に、神の前に罪人であることを詫び、世界の平和を祈ることを決して諦めてはいけない」と世界平和への思いを語った。また、日本がこれから急激な人口減少社会を迎えることに危機感を示し、「皆様方にお祈りをいただいて、私どもが共に自由で平和で、一人一人が尊重され神様に愛される、そういう国をつくるべく力を尽くしていければ、それにまさる喜びはない」と述べた。
各国の大使を代表してイスラエルのヤッファ・ベンアリ駐日大使があいさつし、「私たちは皆、平和を求めている。しかし同時に、心のうちに『戦争』を抱えているのではないか。さまざまな困難な状況にあって心に平和を保つことは、私から始まる、世界の平和へとつながる第一歩であると信じている」と話した。
祈祷会のテーマは「愛が働くとき、不可能は可能に」(マタイ17:20)。東京キリスト教学園理事長の廣瀬薫氏が同じ聖書箇所からメッセージを語り、「イエス・キリストの十字架の愛に生きるとき、不可能はすべて可能になる」と説いた。
廣瀬氏は、十字架の愛を実践し、弱者救済を訴えて労働組合、生協、農協など、現在にまで続く日本の共助の基礎をつくり上げた牧師の賀川豊彦(1888~1960)を取り上げた。旧農協のマークが聖書のヨハネによる福音書12章24節「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ」をデザインしたものだったことを紹介し、「私たちが本当に豊かな実りを求めるならば、自分が一粒の麦となって生きることを考え、十字架の愛に生きるように互いに力を合わせるということを、このマークは教えている」と説いた。さらに、社会運動から教育、災害救援、金融共済システムなど、賀川の取り組んだ広範囲にわたる働きのすべてはキリスト教を中心としたものであり、直接「神の国」の拡大を担う働きだったことを強調した。
聖書の言う「神の国」とは、「皆が一人残らず生かされて、喜びを共にする平和な世界。すべての被造物が神様の御心通りに生かされている場」と説明し、「教会もビジネスも政治も経済も家庭も文化も、すべてを神様の御心通りに生かしてそこに喜びが皆であふれるようにしていく、その平和な世界をつくっていくのが、私たち。この神の国の拡大を、主は十字架の愛によって可能にしておられる」と述べた。
廣瀬氏は、「私たちが皆世界のギャップ(破れ口)に立って、そこに和解を、平和をもたらす、死ではなく命をもたらす、悲しみではなく喜びをもたらす存在として生きていきたい」と語り、「ぜひご一緒に、地上に神の国をもたらす恵みを、今、21世紀のここ日本で協力して、あらゆる領域に展開していきましょう」と、主にある一致と宣教協力の実現を呼び掛けた。
参加者を代表して、立憲民主党の山川百合子衆院議員が日本の政治と経済のため、21世紀キリスト教会主任牧師の増山浩史氏が日本のリバイバルと次世代のため、CBMCアジア会長のキム・チャンソン氏がアジア諸国の和解と世界平和のために祈りをささげた。
山川氏は、「日本の中に抱える課題はたくさんありますが、その課題に私たち一人一人が向き合い、神様の愛の中にあって経済的にも精神的にも満たされ、夢と希望を持って歩んでいかれるような社会にしていきたい。日本の政治、そして経済が、そのために働けるように、神様、どうぞ御力を貸してください」と祈った。
増山氏は、「私たちの思いを一新してください。古い思いを捨て、あなたの御言葉にある新しい命、新しい目線、あなたの語る新しい言葉を受け取って、世の中に出ていくことができますように。そして世の人たちが、私たちがどれほどあなたに愛されているかを見ることができますように」と願った。また、「今、新しい世代をこの日本に起こされていることを感謝します。彼らには恐れがありません。大胆に出て行って、福音を宣(の)べ伝え、聞く者の心にあなたの愛をまいていく、そのような世代が今、大勢起こされていることを感謝します。もっと起こしてください」と祈った。
キム氏は、「私たちの心を開いてくださり、互いに祈り、忍耐強く関係を築いていく者とさせてください。どうぞ、国と国を分かつ大きな壁を乗り越えて、これを打ち壊して一つとなれるよう祈る思いを与えてください。どうぞ世界に、あなたにある和解を与えてください。そうすれば、私たちは平和のうちに生きることができます。主よ、どうぞこの日本に、またアジアに、祈りの勇士を起こしてください」と祈った。
祈祷会には、CBMCインターナショナル会長のジム・ファーンストール氏やCBMCアジア理事長のアリス・タム氏、北米トヨタ自動車副社長のジャック・ホリス氏、両手両足のない「先天性四肢欠損症」のキリスト教伝道者として知られるニック・ブイチチさんをはじめ、世界20カ国から約100人の海外ゲストが参加した。音楽ゲストには、マライア・キャリーや DREAMS COME TRUE、三代目 J Soul Brothers など、ジャンルを問わず国内外のトップアーティストらと共演するゴスペルグループ「ソウルマティックス」が出演し、力強い歌声による賛美で会場を盛り上げた。
閉会のあいさつに立ったCBMC副理事長で日本国家朝餐祈祷会実行委員長の瀬戸健一郎氏は、江戸幕府が黒船来航という外国からの脅威に対抗するために砲台を設置したのがお台場だったことに触れ、「20カ国の皆さんがこの地に集まって、日本のためにお祈りをささげてくださった。このことにどれほど大きな意味があるのか、主に感謝せずにはいられない」と述べた。
また、世界の平和と国家の指導者たちのために祈るNPB運動が世界中に広がっており、翌週には韓国と台湾でも朝餐祈祷会が開かれることを紹介。その一方で、今回、海外からの参加予定者が一部で出国を拒否されていたことを明かし、「まだ世界には、イエスの名のもとに集まり、祈ろうと思っても、それが許されない国や地域があることを共に覚えたい」と祈りを呼び掛けた。
次回の第20回国家朝餐祈祷会は2020年4月29日、京王プラザホテル(東京都新宿区)での開催がすでに決定しており、700人の参加を予定している。