エジプト人信徒3人と日本人5人、神父の9人で交流会
交流会には、エジプト人の信徒が2人に、今出ナンシーさん、アルセニアス神父、さらに日本人も、アッセンブリー教会の女性3人と、日本聖公会の女性1人、そして日本基督教団の記者の計9人が集まり、自己紹介をした。
普段は岡山県でペンキ屋さんの仕事をしているというエジプト人のイーサンさんは、この日炊き出しとミサのためにバスでやって来た。家族はエジプトに住んでいるが、普段はカトリックの教会に通っており、日本でもこれまでプロテスタントの教会に通っていた。コプト教会ができたことを知り、この教会に来た。「本当のコプト教会に通うのは初めてなので、自分たちの教会ができて本当にうれしいです」
もう1人のミッシェルさんは、マイクロソフト・エジプト社に勤めるITエンジニア(!)。現在カイロ大学院でコンピューターサイエンスを学んでおり、国際学会で1週間だけ日本を訪れているのだという。たまたま昨日、インターネットで、コプト正教会で交流会とミサがあることを知り、この日早朝教会にたどり着いたそうだ。
夕方3人一緒に車でやって来たのは、新大阪第一アッセンブリー教会の西海祥子牧師(83)と娘の馨さん、同教会信徒の小野さんだ。
今年7月にこの場所に拠点を構えるまで、コプト正教会の教会がなかったため、各地の教会を借りてミサを行っていた。西海牧師は、たまたま3月に知人の牧師を通して「コプト正教会が礼拝する場所を求めている」ということを聞き、教会を提供したのが縁だという。
「3月に礼拝をさせてくださいと突然お電話をいただいたときは、コプトってどんな教会かしら?確かエチオピアの教会だったかしら?と思っていたら、オーストラリアからの神父様がいらっしゃって、びっくりしました(笑)。でも、日本で祈るための教会の場所を求めて、とても真剣に熱心にお祈りしているのを見て、一緒にお祈りをしたんです。そうしたら思いがけずに、この場所で素晴らしい場所と教会が見つかり、本当によかったなぁと思っています。そして私たちも、今日こうやってここに来ることができたのが、神様のお導きだと思い、感謝しています」と話した。
交流会に当たって、アルセニアス神父は次のように話してくれた。
「今晩来ていただいて本当にありがとうございます。ここは、日本で初めてのコプト教会です。私たちの教会は、聖書に出てくる今から2千年前のイエスの弟子であるマルコから始まります。マルコは信仰だけを持ち、エジプトにやって来ました。知人も誰1人いませんでしたが、神様に導かれ、エジプトで説教を始めました」
「旅で長い道のりを歩いてきて、靴がつぶれてしまったので、最初に靴の修理の店に行きました。靴職人が破れた靴を縫い始めると、針が手に刺さってしまいました。職人は『ああ痛い!神様!』と叫んだそうです」
「マルコはそれを聞いて『これは本当に生きた神様のことを語るいいチャンスだ!』と思い、職人に語り始めました。こうして、その靴職人が宣教を受けた最初の弟子となり、後にはマルコの後任のエジプト(アレクサンドリア)の大司教になったということです。神様の不思議な働きです」
「マルコから始まったエジプトの大司教は、現在の118代目の大司教まで2千年間途切れることない鎖として受け継がれてきました。ミサでの『使徒信条』を作った教父もその1人です(編集注:三位一体論の形成に寄与したアレクサンドリア大司教アタナシウス[296?~373]のこと)。これは本当に神様の恵みだと思います」
「マルコによって始まった教会は現在、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、そしてオーストラリア、世界の全ての大陸にあります。どうしてこのように世界中に広がったかというと、私たちが頂いた素晴らしい福音を行く先行く先で伝えていったからです。この暗い世の中で、私たちはイエス・キリストの光を鏡のように証しするために用いられてきました」
「私たちのただ1人の主イエス・キリストにあって、1つとなっていきましょう。私たちが告白する使徒信条の最後に『1つの公同の教会、1つの主』という言葉があります。その通りのことが、今日実現していることに感謝します。バックグラウンドも国も違っても、主イエス・キリストにあっての1つの教会です。この教会に来てくださって本当にありがとうございます」
共に祈る礼拝
交流会の後は午後9時から、アルセニアス神父の両脇でイーサンさんとミッシェルさんが従者を務め、アラビア語と英語を用いての礼拝が行われた。聖書朗読に続いて、「第三祝文の讃歌(アギオス)」が朗読された。
Agios O Theos , Agios Es-shiros, Agios Athanatos, O ek Partheno gennethis: eleison imas
Holy God, Holy Mighty, Holy Immortal: Who was born of the Virgin, have mercy upon us.
聖なる神よ、聖にして強き者よ、聖にして不死なる者よ、あなたは乙女マリアからお生まれになりました。主よ憐れみたまえ。
そしてこの日、ベツレヘムの部屋で作られた聖体が聖別(consecration)され、3人の信徒が聖体拝領を受けた。礼拝の最後に、アルセニアス神父が「さあどうぞ」と言って、かごの中に残った4つのパンを祝福してちぎり、渡してくれた。その場で口にすると、確かにそのパンはフカフカで、甘く感じられた。