皆さん、こんにちは。私は日本に住むコプト正教徒で、シェリー・メガリーと申します。父はエジプト人で、母は日本人です。エジプトで生まれ、オーストラリアで育ちました。
赤ん坊の時に洗礼を受け、以来ずっとコプト正教会に通っています。これから連載で、エジプトに伝わるキリスト教、コプト正教の歴史や信仰について書かせていただきたいと思います。
まず、コプト正教会では、日々の礼拝や聖体礼儀で、アラビア語・コプト語の2つの言語が使われています(オーストラリアでは英語も使用)。コプト語は、エジプトで1世紀から17世紀ごろまでは実際に使用されていた言語ですが、18世紀からはほとんどアラビア語のみが話されるようになり、現在、普段の生活ではコプト語は使われていません。
しかし、このコプト語はコプト正教会ではとても大切にされていて、教会の中で今もなお生き続けています。そして、コプト語で唱える祈りや聖歌も、私たちコプト正教徒の心の中に深く根を下ろしています。また、コプト語に由来する名前を持つ人も多く、私の名前「シェリー」も、「たたえる(hail)」を意味するコプト語です。
現在のコプト正教徒の人口は、エジプト総人口の約2割にすぎませんが、以前はもっと多く暮らしていました。しかし、1950年代から、迫害や政情不安、経済的苦難などの理由で、多くのコプト正教徒が海外に移民せざるを得なくなりました。
現在エジプト国外で最もコプト正教徒の多い国は米国で、45万人以上が暮らしています。その次は、オーストラリアとカナダです。海外に移民したコプト正教徒には、比較的高い教育を受けた方が多く、特に医学や工学の分野などで活躍しています。
ちなみに、移民ではありませんが、かつて国連の事務総長を務め、今年2月に死去されたブトロス・ガリ氏もコプト正教徒でした。オーストラリアには5万人以上のコプト正教徒がおり、50の教会、3つの修道院、2つの神学大学と4つの学校(小中高)が設立されています。
日本に住むコプト正教徒の数はとても少ないのですが、近年、留学や就職、あるいは国際結婚などがきっかけで日本に暮らすようになったコプト正教徒が増えてきており、今後も徐々にではありますが、増え続けていくことが予想されています。
日本におけるコプト正教会の活動は、オーストラリアの「シドニーおよび連携地域の司教区」の管轄となっており、既に2004年から司祭がシドニーから派遣されていましたが、まだ建物としての教会はありませんでした。
しかし、ようやくこの7月に、京都府木津川市に「日本コプト正教会」を設立し、日本で初めての、私たち自身の聖堂「聖母マリア・聖マルコ・コプト正教会」を持つことができました。
【関連記事】
■ コプト正教会が東京で礼拝、司教が日本の教会指導者にメッセージ 京都で日本初の会堂使用へ
■ 日本初のコプト正教会開堂式 京都府木津川市で教派超え100人が参列
現在の担当司祭はジョシュア・タドロス司祭で、担当司教はダニエル司教猊下(げいか)です。
残念ながら、日本ではクリスチャンの方々にさえ、エジプトのコプト正教会のことはあまり知られていません。日本の方々が私たちの教会、約2千年間途切れることなく続いている歴史や信仰、伝統について興味を持ってくださったらうれしいです。
■ 今年7月に日本で正式な会堂としては初めて拠点を構えた「聖母マリア・聖マルコ・コプト正教会」(京都府木津川市)のホームページ
◇