共和党の大統領選挙候補者ドナルド・トランプ氏は、米国とメキシコの国境に壁を建築する件での教皇フランシスコとの争いを沈静化しようとしている。トランプ氏は、教皇がバチカンの指導者として「偉大な職務を行っている」とコメントした。
インディペンデント紙によると、トランプ氏は18日にサウスカロライナ州グリーンビルで開かれた対話集会の場で、「私は教皇を非常に尊敬しています。彼には大きな魅力があり、とても良いことを行っています。多くのエネルギーがあります」と語った。
17日に教皇フランシスコが「壁を築くことだけを考える」人は「キリスト教徒ではありません」と発言したことを受けて、不法移民の流入を防ぐためにメキシコと米国の国境に巨大な壁を築くことを公約しているトランプ氏は、教皇の発言は「恥ずべきこと」と応酬した。
「宗教指導者が一個人の信仰に疑問を持つことは、恥ずべきことです。私はクリスチャンであることに誇りを持っています。もし大統領となったならば、現職の大統領の下での現状とは異なり、キリスト教が継続して攻撃され、弱められていることを許しはしないでしょう」とトランプ氏は宣言した。
「どんな指導者も、中でも特に宗教指導者は、一個人の宗教や信仰について疑問を持つ権利を持つべきではありません。特に、あらゆる偽の情報を持っているときはなおさらです」
しかし、大富豪の実業家でもあるトランプ氏は、報道陣がトランプ氏と教皇フランシスコとの件を誇張しているとも述べた。
「私は教皇と争いたいわけではありません。争いだとも思っていませんし、教皇は報道された内容よりももっと柔和な発言をしたのではないかと思っています。教皇はおそらく、メキシコ政府からの一方的な話を聞いたのでしょう」とトランプ氏は18日、CNNに語った。
トランプ氏は、薬物取引やギャングによる暴力というメキシコ国境での米国の懸念を、教皇フランシスコが全て理解しているわけではないだろうと論じた。
「彼(教皇)がメキシコ国境を開放する危険を理解しているとは思いません。国境を現状のようにしたいため、メキシコは教皇にこうさせたのです。メキシコは財を成そうとしており、私たちは負けかけています」とトランプ氏。
バチカンの報道官フェデリコ・ロンバルディ氏も、教皇フランシスコは移民の権利の観点から国境問題に焦点を当てているだけで、トランプ氏を特段に問題としようとしたわけではないと語った。
ロンバルディ報道官は、教皇が「トランプ氏は自分の意見を表現豊かに表すことを知っている」が、「最新の発言を常に追っているわけではありません」と述べた。
「宗教と人権のためのカトリック連盟(The Catholic League for Religious and Civil Rights)」など、米国に拠点を置く保守派の団体は、この問題についての報道の在り方が「不自然な論争」だと論じた。
カトリック連盟のビル・ダナヒュー氏は「スティーブ・マルツバーグ・ショー」のインタビューで、「教皇はトランプ氏の姿勢ではない、他のことについてのコメントを求められました。記者はトランプ氏の発言をゆがめて示すことで、カトリックの信者はこのような人物に投票できるのかと、厚かましくも言ったのです」と語った。
ダナヒュー氏はさらに、米国市民によりよく仕えるために国境を強化するというトランプ氏の提案は、カトリック教会にとっても「問題ない」ことだと論じた。
ホワイトハウスのジョシュ・アーネスト報道官はコメントを求められた際、教皇とトランプ氏の論争を重く見ており、バラク・オバマ大統領が「彼自身の個人的なキリスト教信仰が、彼の価値観や大統領選挙で勝利するための優先事項に影響を及ぼしている」と話したことを明かした。
CNNによると、アーネスト報道官は「価値観の多くや優先事項については、トランプ氏は明かしていません」とも述べた。
「しかし私は、トランプ氏が大統領には示さなかった礼儀正しさをもって彼に接しようと思いますし、このことを彼の神との私的で個人的な会話を公に問う機会にはしません」とアーネスト報道官。
共和党のほかの大統領選挙候補者のほとんどは、このことに関わらないことを選択した。例えばジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は、「私はただ、ドナルド・トランプ氏の信仰を問うのは適切でないと思います」と述べた。
テキサス州選出のテッド・クルーズ上院議員も、「それはドナルド(・トランプ氏)と教皇の間のことで、私はそこに立ち入らないつもりです」と語った。