教皇フランシスコは17日、共和党の大統領選挙候補者で大富豪のドナルド・トランプ氏を「キリスト教徒ではない」と述べ、共和党の指名争いに影響を与えた。
ニューヨーク・タイムズによると、6日間のメキシコ司牧訪問を終えてローマに帰る途中の航空機内で、教皇フランシスコはトランプ氏についての質問に「それがどこであろうと、壁を作ることしか考えず、橋を架けることを考えない人は、キリスト教徒ではありません」と述べた。
教皇フランシスコのこのコメントは、司牧訪問の最後にメキシコの国境の町シウダー・フアレスで大規模ミサを執り行った後間もなく出された。教皇はまず、リオ・グランデ川の崖にある、国境を渡ろうとして死亡した人々をしのぶ新しい記念碑に献花した。このことによって、混沌(こんとん)、貧困、戦争から逃れる難民への同情を引き起こした。
大統領選でカトリック信者の投票に影響を及ぼそうとしているのかと尋ねられ、教皇フランシスコは「私は関与するつもりはありません」と述べたものの、警告とともに批判を繰り返した。
教皇フランシスコは、「私はただ、もしこの方がこのような発言をしたのなら、キリスト教徒ではないとだけ言ったのです。私たちは、彼が本当にそういった発言をしたのかを確認しなければなりませんし、そうすることで私は疑問の答えを得られます」と述べた。
トランプ氏はサウスカロライナ州キアワ・アイランドでの選挙活動中、即座に応答し、自分が本当にキリスト教徒であると主張し、教皇のコメントを「恥ずべきこと」だと述べた。そして、トランプ氏は、教皇がおそらくメキシコ政府に何かを言われたのだろうとも推測した。
撮影された映像によると、「教皇は、『ドナルド・トランプ氏は良い人物ではない』と言われたのでしょう。ドナルド・トランプはとても良い人物です。私はとても良い人物です」と、トランプ氏は語り、喝采を受けた。
「教皇は、ドナルド・トランプがクリスチャンではないという旨のことをおっしゃり、私の信仰に疑問を持たれたらしいですが、私はとても良いクリスチャンです。私はその発言を知ってとても驚きました。しかし、私はクリスチャンで、そのことを誇りにしています。宗教指導者が一個人の信仰に疑問を持つことは、恥ずべきことです。私はクリスチャンであることに誇りを持っています。もし大統領となったならば、現職の大統領の下での現状とは異なり、キリスト教が継続して攻撃され、弱められていることを許しはしないでしょう」
「どんな指導者も、中でも特に宗教指導者は、一個人の宗教や信仰について疑問を持つ権利を持つべきではありません。特に、あらゆる偽の情報を持っているときはなおさらです。教皇を駒として扱った人々は自身を恥じるべきです。その人たちとはメキシコ政府です。特に、非常に多くの人の命がかかっている中で、そのような行動をしたことを恥じるべきです。そして不法移民が急増し、危険な存在となり、米国に対して悪をなすときもです」とトランプ氏は語った。
教皇が国境を訪問する数日前、トランプ氏は訪問を批判し、教皇を政治的人物だと呼び、メキシコ政府の依頼で行動していると語った。「私は、教皇が政治的人物だと思います」とトランプ氏は述べた。
FOXビジネスネットワークとのインタビューでトランプ氏は、「彼(教皇)がメキシコ国境を開放する危険を理解しているとは思いません。国境を現状のようにしたいため、メキシコは教皇にこうさせたのです。メキシコは財を成そうとしており、私たちは負けかけています」
長老派の信者と称するトランプ氏は、来るべき南部の予備選挙で勝利するため、福音派の有権者と関係を築いている。
トランプ氏のコメントに対し教皇フランシスコは、「アリストテレスは人間を『政治をする動物』と定義していますから、トランプ氏が私を政治家だと言ったことを神に感謝します。少なくとも私は人間です。私が駒として使われたかどうかは、そうかもしれませんし、よく分かりません。それはあなたと、人々の判断に委ねます」と述べた。