【CJC=東京】家庭をテーマにした世界代表司教会議(シノドス)の全体会議が5日、バチカンのシノドスホールで始まった。
バチカン放送(日本語電子版)によると、初日のあいさつで教皇フランシスコは、シノドスとは、皆の合意を追求する議会ではなく、信仰の目と神の心を通して現実を読み取るために共に歩むという「教会的な表現」であると述べた。
教皇は、シノドスが、教会が聖霊の働きを体験する場所であり、聖霊はすべての人の言葉を通して語られ、常に人を驚かせる神の導きに私たちを委ねると説いた。
教皇のあいさつに続き、エステルゴム=ブダペスト大司教ペーテル・エルド枢機卿が基調講演を行った。
同枢機卿は、現代の家族が直面する問題に耳を傾け、家庭の使命と召命を考え、困難な家庭状況を生きる人々に真理のうちに慈しみをもって寄り添うという3点を重要なものとして示した。また、貧しい家庭を支援し、命を受胎から自然の死に至るまで擁護する必要をアピールした。
全体会議では、シノドスのために用意された「討議要綱」の第1部「家庭の挑戦に耳を傾ける」をテーマに司教らによる発表が行われた。
全体会議は6日も行われた。同日午前の会議で教皇は、カトリックの結婚をめぐる教義は変わっていないこと、昨年のシノドス・第3回臨時総会でもそのことは確認されていることに注意を促し、幅広く問題を扱うべきシノドスが、離婚者の再婚問題など、特定の問題だけに偏らないことを要望した。
全体会議は午前・午後に分かれ、1日2回会議が行われる。6日午前までの会議で、72人の司教がさまざまな視点から家庭司牧をめぐり意見や提案を述べた。
その中では特に、家族や夫婦がキリスト教的生活の中に成長することの大切さが強調され、今日の社会において、その福音的な成長を助けるための教会の司牧、ミッション性の必要が示された。
また、世界の地域ごとに異なる文化や社会において、家庭の役割や生きる状況の違いも明らかにされた。特に、中東の司教から、現在のカトリック教会が置かれた難しい状況、迫害の試練を生きるキリスト教共同体、難民生活を迫られる家族たちの現状が証言された。
6日午後から8日午後まで、言語(英語・フランス語・イタリア語、スペイン語・ドイツ語)とテーマ別に設けられた13の分科会で協議が続いた。
9日には全体会議が再開された。初めに行われた3時課の祈りで、教皇はこの祈りを中東の和解と平和のためにささげたいと提案した。
シリア・イラク・エルサレム・ヨルダン川西岸地区で高まる暴力が、無実の市民を巻き込み、大規模な人道危機を引き起こしていることに憂慮を示した教皇は、「希望と進歩は、平和という選択によってのみ得られる」と呼び掛けた。
そして、シノドス参加中の中東の総大司教や司教、また同地域の司祭、信徒、すべての住民らと心を合わせ、主に信頼して祈るよう述べた。
教皇は同様の紛争状態にあるアフリカにも目を向け、中東とアフリカを「平和の元后マリア」に託して祈った。
第1部のテーマ「家庭の挑戦に耳を傾ける」をめぐる13分科会での討議内容がまとめられ、9日午前の全体会議で提出された。
その内容は、現代社会で家族が直面する諸問題の列挙や分析に偏ることなく、反対に、教会が家庭に置く信頼や希望に光を当てたものとなっているという。
同日午後からは、「討議要綱」第2部「家庭の召命の認識」をテーマとした全体会議に入った。
◇
今回のシノドスは、家族のあり方に関するカトリックの教義を見直す2回目で最後の会議。しかし開幕前日、バチカン(ローマ教皇庁)教理省に務めるポーランド人のクシシュトフ・ハラムサ神父が同性愛を公表し、「教会内の制度化された同性愛嫌悪」を改革するための10項目の「解放マニフェスト」を発表したことで、シノドスに与える影響が注目されている。
同性愛は、シノドスで話し合われる多数の議題のうちの一つ。カトリックの教義では同性愛は「内因性の障害」とされているが、近年、性的指向は先天的との見解を示す神学者も出ている。