デンマークの教会堂⑥
フォネスベック教会 Fonnesbaek Church
2011年8月14日(日)訪問 場所 デンマーク イカスト Ikast
1994年竣工 設計 Ove Neumann, KHR,Ltd. Copenhagen and Overgaard & Danielsen, Ikast
ヤコブのハシゴの架かる教会、多くの人が集う活発な交わりの場
オーデンセから列車で約1時間、ユトランド半島にあるホーセンス(Horsens)駅に着く。ルーテル教会の友人を通じて紹介された向(むかい)さんと奥さんのイングリさんが出迎えてくださった。車でしばらく走ると雨が降り出す。途中道路脇にヒースの花の咲く丘が見えた。嵐が丘の荒涼とした原野を思い浮かべ、冷たい雨の中、紫のヒースの花を摘んだ。
向さんの所属するフォネスベック教会は、屋根にヤコブのハシゴが架かり、天に向かって伸びている。旧約聖書のヤコブの夢の中にあらわれる「天国へのハシゴ」を、彫刻家Niels Guttormsenがデザインした。
平面配置が素晴らしく、礼拝堂、大小集会室、食堂、キッチン、事務室、サークル室など各室が機能的で、シンプルモダンな北欧家具と調和し、たいへんよいと思った。礼拝や教会のいろいろな催しやサークル活動に多くの人々が集い、各部屋が活発に使用されているようだ。
礼拝堂は広く、天井高く、シンプルで、聖卓をギ座台が囲んでいる。聖壇背面の長方形にくりぬかれた空間からやわらかな光が注がれ、内壁にツタを生やしている。会衆席から緑が見えてほっとする演出がよい。私は、津田沼教会の設計で、ツタの代わりに水を上から流し、これと同じような演出をしたので驚いた。
公園のように広大な敷地には、緑美しい芝生に泉や墓地が設けられている。
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西村晴道(にしむら・はるみち)
1948年、靜岡県生まれ。一級建築士。法政大学工学部建築学科卒。住友建設株式会社入社・退職し、アメリカ合衆国ソービック建築設計事務所短期留学を経て、1984年、西村建築設計事務所開設。現在に至る。ルーテル学院大学第10回リード賞(キリスト教芸術分野)受賞。日本福音ルーテル静岡教会会員。著書に『FINE ROAD―世界のモダンな教会堂をたずねて』(イーグレープ)。