デンマークの教会堂④
エングホイ教会
2011年8月15日(月)訪問 場所 デンマーク ラナース Randers
1994年竣工 設計 ヘニング・ラーセン Henning Larsen
白いシンプルな外観と船底形の天井をもつ神聖な空間
デンマーク、ユトランド半島ラナースにあるエングホイ教会は、デンマーク建築界の重鎮ヘニング・ラーセンの設計による。ぜひ見学したいと思ったので友人のSさんに話すと、「その教会なら昨年ワイズメンズクラブの国際大会で行きましたから、連絡を取ってみます」との有り難い話になった。
そんな幸運により、ラナース駅前のホテルまで、アルネ・クリステンセンさんご夫妻がにこにこして迎えに来てくださった。初対面なのに何年来の友人のようだ。車で30分ほど行くと、郊外のなだらかな緑の丘の上に白い箱のようなエングホイ教会が見えた。北欧の8月は上着がいるくらいの気温で少し肌寒い。役員の方たちも集まり、お茶の準備をして温かく歓迎してくださった。
船底のようなV字形の天井と、コンクリート打ち放しの壁とのスリットから、明るい光が降りそそぐ礼拝堂。多数のペンダント照明、側面の小さい四角形の窓からのやさしい光。
聖卓、説教台、洗礼盤は黒御影石、ベンチの黒が厳粛で引き締まった印象を与える。
北欧の教会に入ると会堂に船が飾ってあり、建物の形そのものが船であることも多い。なぜかと聞いたら古くからの伝統で、船は教会のシンボル、キリスト教会はこの世を航海する船、また船に乗って海外に伝道に行きなさいという意味もあるそうだ。
エングホイ教会は現代のモダンな建築であるが、しっかり古き良き伝統を守り続けている。
緑の芝生の美しい敷地内に教区コミュニティーセンターも併設してあり、その日は絵画展が開催されていた。
エングホイ教会の後、聖クレメンス教会(船の形の教会)、ヨハンネス教会、そしてアルネさんの教会にも案内していただき、3時にはアルネさんのご自宅でコーヒータイム。りんご、スモモ、いちご、バラ、ラベンダーなどの美しいお庭を見ながら、夫人の手作りケーキ、すいかをごちそうになり楽しい時を過ごした。日本茶を入れて味わっていただいたが、普段は砂糖を加えて飲むというのに驚いた。
教区コミュニティーセンターにてティータイム
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西村晴道(にしむら・はるみち)
1948年、靜岡県生まれ。一級建築士。法政大学工学部建築学科卒。住友建設株式会社入社・退職し、アメリカ合衆国ソービック建築設計事務所短期留学を経て、1984年、西村建築設計事務所開設。現在に至る。ルーテル学院大学第10回リード賞(キリスト教芸術分野)受賞。日本福音ルーテル静岡教会会員。著書に『FINE ROAD―世界のモダンな教会堂をたずねて』(イーグレープ)。