花嫁
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花嫁(22)真夜中に 星野ひかり
幼いころ、真夜中にふと目覚め、窓を開けて外を見ると、夜空は星々をはらんで藍や青、紫に発光するかのように鮮やかだった。私は窓辺に腰かけて、長いこと空を見つめていた。幼い私にとって、真夜中は神秘的な時間であった。
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花嫁(21)希望よ 星野ひかり
夫の病院へ定期健診に行く途中、枯れ木の中に、昨年見上げ続けた桜の木を見つけた。昨年のお花見は、毎日の夫のお見舞いの行き帰りに見る、坂道の途中に覆いかぶさるように枝を広げるこの木の桜であったのだ。
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花嫁(20)おひなさま 星野ひかり
幼いころ、お母さんが真冬にあかぎれだらけになりながら、台所で水仕事をしていた。その後ろ姿は、悲壮感にあふれていた。ついにガスの瞬間湯沸かし器を買ってからも、その悲壮感は変わらないものであった。
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花嫁(19)日常よ 星野ひかり
夫が職場に復職し、以前の日常が戻った。手術によって口内のスペースが狭くなったため、夫でも食べやすいお弁当を毎朝作り、ごみを出し、夫を駅まで送ってゆく。夜が明けたばかりの真冬。エンジンが温まるまで時間がかかり、白い息を吐きながら車を走らせる。
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花嫁(18)繁華街で 星野ひかり
私は17歳で病気を持った身ながらに家を出たが、30歳のころまでは、繁華街を渡り歩いて働いてきた。たくさんの薬を飲んでいる、酩酊しかけた体で働ける場所は、他にはないように思われた。
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花嫁(17)生き難く 星野ひかり
何不自由ないというのに、生き難く、張り裂けるような心の痛みにうずくまって、薬を頬張る朝もある。夫はひざまずいて私を抱きすくめ、「大丈夫だ、大丈夫だ」と頭をなで続けてくれる。生育環境で与えられた心の傷は、いまだに私の人生に暗い影を落として…
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花嫁(16)祝福なる結婚 星野ひかり
イエス・キリストの神の子としての栄光は、2024年のクリスマスも過ぎ、年も暮れようとしている現代の私たちにもまばゆい希望となって照らされている。このお方からあふれる愛が、この暗い世をも照らしてくださっている。
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花嫁(15)ユダという弟子 星野ひかり
1カ月半に及び統合失調症の再発をし、ばかげた妄想に取りつかれながら、4週間の入院を経て今日家に帰ってきた著者である。私は統合失調症と診断された17歳から数えたら、寛解している時期がとても長く、これほど短期間に頻繁に再発を繰り返したのは…
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花嫁(14)御霊に燃えて 星野ひかり
昨日、一昨日と使徒行伝を読み、パウロの嵐のような伝道の道を心は共に旅した。なぜこれほどに険しい道のりを神様はパウロや弟子たちにお許しになったのだろうか。そして、たけだけしくこの世の試練に立ち向かうパウロの燃えた心に、私の心も熱くなった。
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花嫁(13)全ての人が御救いに 星野ひかり
クリスチャン以外は天国に行けないと、御言葉を基に説かれるたび、私たちの心は深く傷つきはしないだろうか。クリスチャンではない親族や友を愛するが故に、「この人が御救いにあずかれないとは・・・」と頭を抱えることもある。
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花嫁(12)ゲツセマネの弟子のごとく 星野ひかり
イエス様がゲツセマネの園で祈っているときに「目を覚ましていなさい」と命じておいた弟子たちが、皆眠りに落ちてしまった。木々の葉が風にかすれる音の響く静寂なる夜に、にわかに忍び寄ってくる殺意の匂い・・・。
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花嫁(11)苦難こそ 星野ひかり
いつも喜んでいたい、聖霊様に満たされて幸せな私であって、光のようにイエス様の栄光を現したい。そんなふうに願っていても、どうしてか悲しみが心におとずれる。むなしさ、寂しさ、悲しみが・・・。そして心はどんよりと湿り、喜びは影をひそめる。
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花嫁(10)この出来損ないをも 星野ひかり
ある夜目覚めると、私は知らない部屋におり、壁に貼られた大きなスクリーンには不穏な白い色が映し出され、不気味に発光していた。ここはどこか、とおびえてしばらくすると、ここは自分の部屋の寝室であり、白いスクリーンだと思ったものは…
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花嫁(9)白百合の願い 星野ひかり
夫のがんが分かった当初、夫を失ったら私はどうやって暮らしてゆけばいいのだろう、と不安な気持ちに押しつぶされそうになった。心がふさぎ込み、潰れそうになった私を、牧師先生や義両親、親族は「大丈夫だ」とその根拠までも共に考え、励ましてくれた。
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花嫁(8)愛の深みを 星野ひかり
イエス様の、くぎに刺し通された傷跡の灼熱(しゃくねつ)の痛みの中にハデス(地獄)があるようだと私はよく思ってきた。そのおどろおどろしい罪の灼熱の痛みにこそ、私たちが堕ちるべきであった罪の報いの世界があるのだ、と。
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花嫁(7)痛みと愛は 星野ひかり
夫は化学療法のための1カ月半に及ぶ入院生活を終えて、わが家に帰ってきた。ちょうど夫が入院している1カ月半、私も心労から体調を崩して入院してしまい、この連載もお休みさせていただいていた。
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花嫁(6)喜びとは 星野ひかり
夫の右上顎から目の下まで、そして首筋のリンパをも切り開く手術が行われた。手術は8時間半におよび、夜の9時近くに、無事に終わった。ICUで横たわる夫の姿に、体だけは丈夫だった今までの夫には感じたことのなかったいとおしさが込み上げた。
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花嫁(5)花婿は与えるばかりである 星野ひかり
3月の初めに、私の夫は上顎を原巣とするがんの宣告を受けた。提示された生存率は高いとも低いとも言えなかった。私は憔悴(しょうすい)し、ろうばいし、泣いた。主のなさることは最善であるということを疑うことはなかったが…
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花嫁(4)痛みを知る者は 星野ひかり
私の人生はどこかしら、暗い陰のあるものであった。人生は不平等だ。不幸せに生まれつくと、誰もが平等で、皆どこかしら不幸せなものだと信じたがる。しかし多分、そうではない。
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花嫁(3)衰えはイエス様の招き 星野ひかり
17歳で統合失調症と診断されてから、私にはさまざまな苦しみがあった。その病名は、複雑性PTSDとも、解離性障害とも、うつ病の併発とも言われた。私が20代の頃は多剤処方がまかり通っていたため、一日に20錠以上の薬を処方された。
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