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花嫁

花嫁(10)この出来損ないをも 星野ひかり

2024年8月22日19時48分 コラムニスト : 星野ひかり
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花嫁(1)食卓 星野ひかり+

ある夜目覚めると、私は知らない部屋におり、壁に貼られた大きなスクリーンには不穏な白い色が映し出され、不気味に発光していた。ここはどこか、とおびえてしばらくすると、ここは自分の部屋の寝室であり、白いスクリーンだと思ったものは、カーテンを開けっぱなしで寝たために、窓の向こうに白けた朝が来ていただけに過ぎなかった。

私は恐ろしくなることがある。突如災害に見舞われたりしたならば、どうしたらいいだろう。薬も切れてしまったら、統合失調症は再発するだろう。ただでさえ大変な有事の中で家族にも迷惑をかける。足が震えるほどに、明日が怖くなるときがある。

しかし、そんな私であっても、主が愛してくださっているのだ。この世の王の王が私を愛し、守ってくださることを約束しておられる。

私はクリスチャンらしい、とはお世辞にも言えない。クリスチャンとはキリスト者であり、キリスト者はキリストに似たものになるという。しかし、イエス様に似ても似つかない、いい加減で、過去の傷や病気、それによる心の痛みを言い訳にして、なにかとひねくれてばかりいる私である。

それでも主は、見捨てはしない。最期までこの出来損ないと伴走してくださるお優しい方がイエス様である。

クリスチャンらしいと自分を思える人などあまりいないと思うが、それでも私ほどの出来損ないもまずいないのでは、と思うこともしばしばである。しかし聖書には、「ただ、わたしたちは、達し得たところに従って進むべきである」(ピリピ3:16)と書いてある。同じキリストを信じる霊の家族であっても、おのおのの歩幅、信仰、生き方がある。主は強いるお方ではない。こうでなければいけない、と愛を強いるお方ではない。

主が捕らえられたとき、主に対して熱烈な愛を持っていたはずの弟子たちさえも、恐怖のあまりに一目散に逃げ出した。その弟子たちのことを主はお責めにならなかった。主ご自身がガリラヤのほとりにまで、故郷に逃げた弟子たちを迎えに来られ、じっと魚を焼いて、弟子たちが水から上がって来るのを待っていてくださったお方だ。そんなお優しい主であり、私たちの弱さをことごとくご存じで、その弱さもひっくるめて愛してくださるお方である。

今よりもっと、少ししか主のことを愛せないときもあった。主がなぜこのように、厳しい道のりを私の人生にお与えになったのか分からなかったときだった。私は仕事と睡眠以外の時間を全て祈りに費やし、生まれ育ちの不遇を主に問い続けた。

何年もの間、主と問答し、言い争った。その果てで、私なりの主からの答えを頂けた思いがしている。厳しい道のりの中で主にたどり着いたからこそ、あわれみや慰めを受けられた。また、人の世界の厳しさを知ることができた。私はその問答の時間を通して、深く主を愛するようになった。険しかった人生をも感謝した。特別に愛されているのではと思うほどであった。

夫のがん、そして自分の病を通して、「試練に会った場合、それをむしろ非常に喜ばしいことと思いなさい」(ヤコブ1:2)との御言葉のように、試練の中にあるからこその、主の愛やあわれみを体験させていただけた。人それぞれに異なった道が与えられている。人と見比べてねたみの心を起こしては卑屈な思いを持ちやすい私に、主は「それがあなたに関係がありますか。あなたはあなたのことだけを考えなさい」と、優しく諭される。

夫のがんは、再発のピークはもはや過ぎた。しかし、5年間はびくびくしながら検査の日を迎えるであろう。つらいこともあるだろう。そのことを想像しては胸が重く苦しくなり、ふさぎ込んでしまうこともある。

しかし主は、「あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である」(マタイ6:34)と言っておられる。私たちにできるのは一日一日精いっぱい生きてゆくことしかないだろう。あまりに険しい道のりであるなら、聖霊様が守り、主ご自身が私を背負い運んでくださる。

「全て重荷を負っている者は私のもとへ来なさい。私は柔和で私のくびきは軽いのだ」。決して主は寒空の下、薄い体操着でうさぎ跳びを強いる体育教師や、罪を見張って数え上げる警察官のようなお方ではない。主はその心に十分な愛を注ぎ、おのずと人を変えてくださる。

私たちの顔にもはや覆いはなく、栄光から栄光へと、そして気が付けば、イエス様に似ている、そう変わってゆくのだよ、と約束してくださる。そのためにはただ、「心を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい」(マタイ22:37)と、愛するしかないお方を、愛してゆけばいいのだという。

主との道は愛であり、愛とはあまりに甘美なものであり、「愛する者よ、愛に酔え」(雅歌5:1)と主が言われる通り、主の愛に酔いながら歩む麗しい道のりこそ、クリスチャン生活といえるのではなかろうか。

どんな試練の中であろうと、歌ってしまうときもあるほどに。

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◇

星野ひかり

星野ひかり

(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。18年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。同年より、クリスチャントゥデイで連載を始める。これまでの掲載作品は、「のりぼと神様」(18年)、「はっつぁんとかおる姫」(同年)、「背徳の街のマリヤ」(19年)、「み使いダニエル」(20〜21年)、「さくら時計」(21〜22年)、「すみれ時計」(22年)、「小菊時計」(同年)、「夜明け前」(22〜23年)、「花嫁」(24年〜)。

■ 星野ひかりフェイスブックページ
■「花嫁(9)白百合の願い」で取り上げた星野ひかりの石鹸はこちら

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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