み使いダニエル
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(み使いダニエル・最終回)トモコのものがたり
トモコは、一歩歩くごとに街灯の明かりに反射して道を照らしてくれる、水銀色のアスファルトを見つめていました。もうどれほど歩き続けたことでしょうか。ヒールのあるサンダルを履いてきてしまったことを後悔しました。
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(み使いダニエル・信仰者編)マサトのものがたり
厚く切ったバゲットに熱々のガーリックオイルを垂らして頬張ると、なぜかため息が漏れました。‘もうあとはないぞ’ 耳元で誰かがささやきます。テーブルの上には、先日の婚約式で婚約者の母からもらった花が咲いていました。
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(み使いダニエル・信仰者編)ミチコのものがたり
「ずいぶん物好きがいるもんだな」。夫は新聞をめくりながら、つぶやきました。「自分の娘のことを、よくそんな言い方ができるわね」。ミチコは大根を切る手を止めて、むきになって言いました。
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(み使いダニエル)悪霊デミオンと信仰者の戦い
地の一体に、闇が広がっておりました。へどろのように重い闇が、この世界を覆い尽くそうとしておりました。闇は暗い声で、ささやいておりました。「友達よ」。そして誘っておりました。「この虚無へおいで、そしてその日の悦楽を愉(たの)しもうではないか」
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(み使いダニエル・信仰者編)ケンジのものがたり
冷たいものに手首をつかまれ、暗い所に引きずり込まれることを感じました。暗い所は底が見えないそれは恐ろしい暗闇で、ケンジのことを、口を開けて待っています。その力にあらがって、叫んだ声で目を覚ましました。
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(み使いダニエル・信仰者編)サキのものがたり
6畳の洋間とベージュ色のユニットバス、小さなキッチン。ささやかな部屋でありました。窓際に寄せた勉強机には、アンティーク調の縁取りの写真立てが大切そうに飾られており、サキの愛した大伯母が満面の笑顔でサキを見守っていてくれました。
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(み使いダニエル・信仰者編)ヨウコのものがたり
田舎町の薄暗い路地裏の、小さなスナックの電飾は置き忘れられたように今日も灯っておらず、ほこりがかぶり始めていました。木目調の扉には張り紙がしてあり、「しばらくお休みさせていただきます」とペン字で書かれておりました。
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(み使いダニエル・信仰者編)ハナのものがたり
ハナはベッドにねそべり、ガーゼのケットをかぶってまどろんでおりました。神様に祈りたいのに、からだも心も疲れており、指を組むことさえできませんでした。もともと丈夫なほうではないハナには、日々の家事とささやかな仕事さえつらいものでありました。
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(み使いダニエル・信仰者編)ケンのものがたり
悪がケンの体にまとわりついておりました。牧師の言葉を信じて、生まれ変われる希望を何度も持ちました。しかし、それでもケンは、肉に染み付いた罪のままに、人を陥れ、自分を傷つけるような暮らしぶりを繰り返してしまうのです。
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(み使いダニエル・信仰者編)ミキのものがたり
ミキは家族の寝静まった深夜に、台所の明かりをたよりに聖書を読んでおりました。1章読み終わると、息をついて「神様、感謝します」とつぶやきました。聖書を胸に抱き、今までの人生を顧みました。
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(み使いダニエル・信仰者編)アキラのものがたり
アキラの勤めるケアホーム「ひかりの家」では、誕生日会の準備の真っ最中です。折り紙の輪っかを飾りつけ、ペーパーフラワーをリビングの壁にテープで止めて、安っぽくはありましたがお祝いの雰囲気を作っています。
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(み使いダニエル・信仰者編)タエのものがたり
大都会の真ん中の、夜景のきれいなカフェテリアに、タエは一人でおりました。夜中の2時を過ぎても、街はネオンにあふれて活気に満ちて、人は道を行き交っておりました。
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(み使いダニエル・信仰者編)コータのものがたり
人はどれほどみじめなものだろうか。人はどれほど恥ずべき土くれだろうか。みじめな愛から生まれてきた。みじめな愛を故郷として、父母のもとから生を受けた。同じように生きている。神から顔を背けて。
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(み使いダニエル・信仰者編)ユミのものがたり
明けの空の色がみるみると変わってゆく中を、小鳥のさえずりが響き始めました。花壇の葉の先には朝露の結晶がきらめいています。凍てつく夜に耐え忍んだ野良猫たちは、遠い地平の朝日を見て安堵しました。
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(み使いダニエル・信仰者編)タイジのものがたり
今よりもっと幼い頃のことを、タイジはよく覚えていました。タイジは里山に囲まれた田舎町に生まれ育ち、自然が好きな夫婦のもとで育てられ、幼い頃から田んぼで泥んこになってザリガニ採り、木登り、野だぬきと追いかけっことやんちゃのし放題で育ちました。
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(み使いダニエル・信仰者編)リエのものがたり
リエはベッドに腰かけ、ライティングデスクを引き寄せて聖書とノートを開きました。開いたのは詩編・・・毎朝4時には目が覚めてしまうリエは、詩編を書き写しながら明かりのつく6時までの時間を過ごしていたのです。
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(み使いダニエル・信仰者編)シュンのものがたり
「信仰! 信仰! 人がどう言っているかではなく、神様がどう言っているかだ! 僕は神様の息子なんだ!」そう言ってほほを打っていたのは、もう50歳になろうとしている一人身のシュンでした。
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(み使いダニエル・信仰者編)リカのものがたり
澄み切った冬の風が音を立てながら吹いています。空は群青色、まだ夜が明ける前、すべてが寝静まった神秘の時間。野良猫たちも鳩たちも身を寄せ合って寒い夜を耐え忍び、ふと空の色がみるみると多彩な色彩を帯びながら変わってゆくのに目を留めます。
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(み使いダニエル)ダニエルのクリスマス
お祝いムードの東京タワーが灯っているはるか上の雲間から、ダニエルは街を見下ろしておりました。街はクリスマスに浮かれて、ネオンはいつもよりも激しく明滅しておりました。
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(み使いダニエル)トモコのものがたり
都会にはクリスマスのイルミネーションがともり始めた頃でした。週末になると赤い帽子をかぶった群れが、駅の角に立ち寒さに身をすくめながらも賛美歌を歌っています。トモコは車の中で毛布にくるまり猫を抱いて、その歌を聞いておりました。
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