60年以上の歴史がある那覇市のキリスト教病院「オリブ山病院」の創設者・田頭政佐(たがみ・せいさ)氏の信仰の歩みや同病院の歴史、また聖書の教えに基づいた同病院の理念や具体的実践、さらには日本のキリスト教病院に対するビジョンなどがまとめられた『オリブ山病院創設者田頭政佐と日本のキリスト教病院へのビジョン』がこのほど出版された。
執筆者は、政佐氏の長男で、現在同病院を運営する社会医療法人「葦(あし)の会」理事長の田頭真一、同病院前院長の宮城航一、淀川キリスト教病院(大阪市)を運営する宗教法人「在日本南プレスビテリアンミッション」前代表役員で宣教師のウィリアム・モアの各氏。
全13章のうち11章は、牧師であり、教育学や心理学の博士号も持つ真一氏が執筆。宮城氏は、第3章「近代キリスト教医療宣教」を担当し、当時琉球王国であった沖縄に初めて派遣された宣教師であり、医師であったバーナード・ジャン・ベッテルハイムによる活動や、戦後の沖縄における医療とキリスト者の医師たちによる活躍を文献的に詳述している。モア氏は、2021年に開催された日本キリスト者医科連盟(JCMA)の第72回総会で行った主題講演「医療宣教~International Medical Mission」の内容が、第12章「発題」でまとめられている。
日本キリスト教病院協会名誉会長で淀川キリスト教病院名誉院長の白方誠彌(せいや)氏は推薦文で、現役時代の政佐氏に最初に会ったときのエピソードを紹介しつつ、「政佐先生が、キリスト教信仰によって、精神科の患者さんに開放的に対応されたこと、1984年に淀川キリスト教病院の柏木哲夫先生がホスピスを開設された同時期に、オリブ山病院にもホスピスを開設されていることは、まさにキリスト教の医療の原点に立脚されていたのだと、感銘を覚えました」と感想を述べている。
また、キリスト教信仰に基づく医療と宣教の在り方について、聖書に基づいた優れた論説がまとめられており、オリブ山病院が真のキリスト教病院として歩む明確な方向が論理的、具体的にまとめられている名著だと評価。「今後、多くのキリスト教病院に連なる人々のみならず、一般の医療人にぜひ読んでもらいたい書物」と述べている。
各章のタイトルは、以下の通り。全298ページ。税込み2860円。オンデマンド形式による出版で、アマゾンで購入できる。
第1章 オリブ山病院の歩み
第2章 全人医療の始まり
第3章 近代キリスト教医療宣教
第4章 葦の会の職員の基本理念の具現化としての全人医療の実践と運営と経営
第5章 聖書に基づく全人医療の具現化
第6章 理念の実践と評価
第7章 理念の浸透
第8章 医学と聖書に基づく全人医療
第9章 葦の会の医療における理念の実践の方法
第10章 聖書の終末観と医療
第11章 アジアキリスト教病院協会
第12章 発題
第13章 キリスト教病院のビジョン
■『オリブ山病院創設者田頭政佐と日本のキリスト教病院へのビジョン』(オンデマンド、2023年6月)