オリブ山病院(沖縄県那覇市)は6月27日から7月8日にかけて、3年ぶり2回目となる「臨床牧会教育」(CPE)の短期研修コースを開催した。部分受講も含め23人が参加し、うち5人が2週間にわたる全課程を終え、修了証書を手にした。
CPEは、欧米では広く行われている病院チャプレン向けの研修。オリブ山病院では2019年に第1回を開催。その後、新型コロナウイルスの感染拡大などのために延期を余儀なくされたが、今回3年ぶりに開催した。
通常は、主にスピリチュアルケアについて学ぶが、今回は、日本の医療の在り方や病院経営、チームケアなど多方面にわたる学習と実習を実施。対象もチャプレンだけでなく、教会を牧会する一般の牧師や信徒、キリスト教病院管理者などに広げ、外部講師11人、内部講師8人により、2週間にわたる集中的な学びの機会を提供した。
期間中には、CPEのプログラムの一環として、オリブ山病院創立64周年を記念した講演会も開催。外部講師の1人である笹子三津留氏(兵庫医科大学名誉教授、淀川キリスト教病院外科特別顧問)が講演した。笹子氏は、胃がん切除手術の世界的権威として知られ、看護師の妻と共に通う御影神愛キリスト教会(神戸市)では、がん患者やその家族たちが集い、語り合える場として「メディカルカフェ」を開催している。講演では、こうした医師として、また信仰者としての経験に基づきながら、オリブ山病院が掲げる聖書に基づいた全人医療の実践について語った。
今回のCPEの前半部分に参加した金城学院大学薬学部教授の野田康弘氏は、白方誠彌(せいや)氏(淀川キリスト教病院名誉院長)による講義の感想として、「財務的に厳しいときも理念に従って病院運営することで、社会から必要とされる病院として生き残っていけることが理解できました」とコメント。「聖書に基づいた理念を貫き通すことが成功の近道であることを実感しました」と述べた。
また、仲本賢一郎氏(オリブ山病院法人事業統括本部長)による講義では、「現場の職員がキリスト教精神に基づいた働きをするためには、キリスト教精神に基づいたクリティカルパスを作成する必要があることが分かりました」とし、渡口めぐみ氏(同緩和病棟課長)による講義では、「聖書に基づく全人的ケアにおいて、チャプレンの働きが欠かせないことを実感しました」などと述べた。
笹子氏による講義では、「患者が抱く、恐れ、怒り、後悔、罪悪感は、死が何であるのか分からないことに起因していると感じました」とし、「まさに死の問題を解決する『魂の救い』がなければ本当のスピリチュアルケアではないと思います。そして、死の問題に直面している患者をチャプレンにつなげる人がいなければ、スピリチュアルケアは実現しないと理解できました」と感想を寄せた。