英国史上最長の70年にわたり君主として仕えたエリザベス女王。亡くなる2日前には、英与党・保守党の党首に選ばれたリズ・トラス氏を首相に任命するなど、若き日に「死ぬまで奉仕する」とした決意を文字通り通した。静養先の英北部スコットランドのバルモラル城で、96年の生涯を閉じた8日午後(日本時間9日未明)、英王室は女王が「安らかに」死去したと伝えた。
70年という長期の在任期間もあり、女王は王女時代も含め、歴代のローマ教皇5人と会談した。英国国教会は16世紀、ヘンリー8世の離婚問題をきっかけにカトリック教会から分離独立。女王は、英国国教会の「信仰の擁護者」「最高統治者」としての立場もあり、歴代教皇との会談などを通し、両教会の橋渡しとなる役割も担ってきた。ここでは、カトリック系のCNA通信の報道(英語)をもとに、女王が会談した歴代教皇5人を紹介する。
ピオ12世(1951年)
女王就任1年前の1951年、当時はまだ王女であったエリザベス女王は、夫のエディンバラ公フィリップ殿下と共にバチカンを訪問。第260代教皇ピオ12世(在位:1939~58年)と会談した。
ヨハネ23世(1961年)
10年後の1961年、女王は再びフィリップ殿下と共にバチカンを訪問。教皇の住居であるバチカン宮殿を訪れ、第261代教皇ヨハネ23世(在位:1958~63年)と会談した。ヨハネ23世は、女王について「大きな責任の重みを、飾り気なくかつ威厳をもって担っている」として、「深い個人的尊敬の念」を示したとされている。
ヨハネ・パウロ2世(1980年、1982年、2000年)
第262代教皇パウロ6世(在位:1963~78年)と、その後のわずか約1カ月で急逝した第263代教皇ヨハネ・パウロ1世(在位:1978年)との会談は適わなかったが、第264代教皇ヨハネ・パウロ2世(在位:1978~2005年)とは、1980年、1982年、2000年の3回にわたり会談している。
1980年の1回目の会談は、これまで同様、フィリップ殿下を同伴してバチカンで行われた。一方、この年のバチカン訪問は、英国君主としての公式訪問で、2年後の1982年には、ヨハネ・パウロ2世が歴代教皇として初めて英国を訪れた。2回目の会談はこの際、ロンドンのバッキンガム宮殿で行われた。その後、2000年に3回目の会談がバチカンで行われた。
ベネディクト16世(2010年)
第265代教皇ベネディクト16世(在位:2005~13年)は2010年、4日間にわたって英国を訪問。女王はこの際、スコットランドの首都エディンバラで会談した。ベネディクト16世はこの時の会談について、「世界の人々の幸福、また社会におけるキリスト教的価値の役割に関する幾つかの深い懸念を共有することのできた、非常に友好的な会談であった」と述べている。
フランシスコ(2014年)
英国とバチカンの国交回復100周年の節目となった2014年、女王は14年ぶりにバチカンを訪問。フィリップ殿下と共に、現職の第266代教皇フランシスコ(在位:2013年~)と会談した。会談は非公式なものだったが、約20分にわたって行われ、女王と教皇それぞれが贈り物を交換した(関連記事:エリザベス英女王がバチカン訪問 非公式で約20分会談)。
教皇は女王の死去を受け、新国王に就任した女王の長男チャールズ3世に弔電(英語)を送り、哀悼の意を表明。女王の永遠の安息を祈るとともに、「英国と英連邦のためにたゆまぬ奉仕をされたその生涯、職務への模範的な献身、イエス・キリストにある信仰の確固たる証し、またその約束において固く抱いていた希望に対し、敬意を表します」と述べた。